母には本当に苦労をかけた「唯一の後悔は…」

── 20代で実業家として走り出し、次々と新しい挑戦に飛び込んでいかれました。その背中を押していたのは、どんな思いだったのでしょうか。

 

マダム信子さん:決してカッコつけるわけではないのですが、いちばんは「親にいい暮らしをさせたい」という思いです。とくに母には本当に苦労をかけてきましたからね。

 

母は、私がマダムシンコを立ち上げて2年後に亡くなりました。成功した姿はなんとか見せられたけれど、「いい暮らしを十分にさせてあげられなかった」という気持ちが、今でも胸に残っています。「母ちゃんはお前の電話を待ってんねんで」と父からよく言われていましたが、当時はがむしゃらに働くしかなくて。旅行に連れて行く余裕もなかった。もっとおいしいものを食べさせたり、きれいな景色を見せてあげたり、できたはずのことはたくさんあったと思う。これだけが、私の人生で唯一の後悔ですね。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/マダム信子