「障がいがあるからつらい思いを…」校長の言葉に起業を決意

竹内亜沙美
働くなかで「障がい児教育」のあり方を考えるようになった

── 特別支援学校に勤務しながらNPOを立ち上げたそうですが、その理由は?

 

竹内さん:「障がいのある生徒たちの進路」に不安を感じたからです。当時の特別支援学校の授業内容に対して、「子どもたちが社会で生きていく力を身につけることができるのだろうか」と疑問を抱いて…。文字を書くことが苦手な子には、「名前を書く練習」を延々と繰り返させていましたし、足し算なども、「できるまで繰り返し教える」という感じ。

 

私は、障がいのある子たちに必要なのは、「通常学級に通う子たちと同じことができるようになる」ということではなく、「生きるために必要なスキルを身につける」ことだと考えています。計算を解くことよりも、重さを測ったり、調整したりする実践的な力を身につけたほうが、社会に出たときに役に立つと思うからです。

 

そう考えて、32歳になったころ「障がい児に社会的なスキルを教える」ことを目的にNPOを設立。障がいのある子たちが放課後に通う支援施設「放課後等デイサービス」を訪問しながら、講師活動を行うようになりました。

 

── その後、起業して放課後等デイサービスの運営を始めました。あえて「就労準備のための」放デイを立ち上げられたのは、NPOの活動を続けるなかで、何か気づきがあったということでしょうか。

 

竹内さん:NPOの活動を通して、「自分で放課後等デイサービスを運営したい」という意欲が芽生えつつありましたが、大きなきっかけになったのは、卒業式での校長先生の祝辞の言葉でした。校長先生は、卒業する生徒たちに向けて、「これから社会に出ていく君たちは、障がいがあるためにつらい思いをするかもしれない。それは私たち大人が作った社会が悪い。ごめんなさい」と謝ったんです。

 

その言葉で、「私も、今の社会を作っている大人のひとりだ」と立ち返ることができました。社会に出た生徒たちがつらい思いをするのは、障がい者への理解がないから。卒業生が、「障がい」を理由に仕事に就けなかったり、雇用されても必要な配慮を受けることができなかったりする事例は多く耳にしています。でも「障がいがあるから仕事ができない」「障がいがあるから社会に馴染めない」というのは偏見で、「働くとはどういうことか」「社会で生きるとはどういうことか」を学び、必要なスキルを身につけていれば、そのギャップは埋めていけるはずなんです。

 

「障がいのある子たちが、社会に出ても不安を感じずに生きていける仕組みを作りたい」。こう考えて、障がいのある中高生が「就労を視野に入れて準備を行える支援施設」を作ろうと決意しました。