住む場所がなくなり実家に帰るも…
── 追いつめられている状況にもかかわらず、自分と向き合えていなかったのですね。
西尾さん:大学卒業後、就職もせずフリーターになりました。家賃が払えなくなってアパートを追い出されて、女性のところに転がりこんで…。いわゆるヒモですね。別れたら別の女性のところに行く生活をしていたら、行く場所がなくなりました。しかたなく実家に戻ったのですが、両親はバカ息子と縁を切りたかったのかもしれません。家の鍵が変えられて、「開けて」と呼んでも返事もない。2日間、玄関の前で過ごすしかありませんでした。
3日後、ようやく家の中に入れてもらったら、段ボール3箱を突きつけられました。借金の督促状と、迷惑をかけた女性たちからの「息子さんにひどいことをされました」と訴える手紙の山でした。当然、両親は怒り狂っていましたね。でも、行くところのない僕は「借金は絶対に返済するから、家に住まわせてください」と、必死に頼みこみました。
ところがそれは、うわべだけの反省でした。なんとか「実家にいていい」と許されると心のなかでガッツポーズし、即、パチンコに行きました。
── それはさすがに…。西尾さんが改心するタイミングはいつ訪れるのでしょうか。
西尾さん:あるとき、公園でボーッとしていたら、目の前に運送会社の車が通ったんです。なぜなのか、いまでも説明がつかないのですが、そのとき、ふと「この先、ずっとこの借金まみれの自堕落な生活が続くのはイヤだな」と思ったんですよ。一度死ぬ気で頑張ったら、人生が変わるかもしれない…という気がして。
そこでスイッチが入りました。借金を返済するため、バイトを3つかけ持ちして、寝る間も惜しんで働き始めたんです。すべては借金返済のためでした。効率よく仕事をかけ持ちするために、家にはほぼ帰らず、バイトと次のバイトまでの時間に仮眠をとる生活です。ひとつのバイトを終えたら、休憩室のすみっこで1時間くらい仮眠させてもらい、次のバイト先に向かって…。
とはいえ、バイト終わりなのに場所を借りて寝るのは、さすがに気が引けます。少しでもバイト先の社員さんなどに好印象を抱いてもらうため、人より早くバイト先に入って自分から声をかけて、手伝いやトイレ掃除を積極的に行いました。すると、目に見えて変化が見えたんです。