NICU勤務を経て、ベビーマッサージに出会い

── 新しい仕事にチャレンジしてみていかがでしたか。

 

蛯原さん:今まで知らなかったアパレルの仕事の舞台裏が知れてすごく勉強になりました。当時、忙しいときは朝から終電まで働くことがあって。責任ある仕事を任せてもらえて大きなやりがいを感じるとともに、この働き方をずっと続けていくことはできるのだろうかという漠然とした不安がありました。

 

そのころ、たまたま立ち寄った書店で、以前勤務していた医療系の書籍の棚を見ていました。そこでベビーマッサージの本を見つけて。NICUでたくさんの赤ちゃんと接してきたのですが「これは知らないな」と思って何げなく手に取ったんです。読み進めていくと、ベビーマッサージの発祥の一説には、赤ちゃんとのタッチケアがあると知って、「私もNICUでしていた!」と思いました。

 

赤ちゃんの肌に直接、触れることで安心感を得られたり、絆が深まったりすることを実感していましたし、親子の信頼関係はその後の成長にも影響すると思っていました。「これは知らないともったいない」と思い、そこからベビーマッサージの資格取得の勉強を始めました。

 

── 今では全国でベビーマッサージのイベントを開催されています。最初はどのように始めたのですか。

 

蛯原さん:街頭でアンケートを配ってデータを集めることから始めました。赤ちゃんが産まれて、何が変わりましたかとか、悩みはなんですかとか、どういったことに興味がありますかという内容です。その結果を1枚1枚まとめて、イベントの運営に活かしてきました。

 

── 地道な作業ですね。

 

蛯原さん:NICUでの勤務経験はあっても、そのころまだ子どもがいなかったのと、友人にもまだ出産している子がいなくて。実際に子育てをしているママたちがどんなことを感じているかを知るために、アンケートを取ろうと思ったんです。「わからないなら聞くしかない」という感じですね。

 

実は活動を始める前に周りから、「赤ちゃんに関することだし、子どもを産んでからにした方がいいんじゃない?」とも言われたのですが、家族が背中を押してくれました。夫も家族も応援してくれて、友里も「英里がやりたいことだったら、やったほうがいいよ!」と。ここで勇気を持って一歩踏み出してよかったと思っています。

 

対面のレッスンはベビーマッサージをやってみたいと言ってくれる方を集めて、公民館などの施設で少人数から始めました。続けているうちに、周りの方が「今度はスタジオでやってみない?」と声をかけてくださるようになって。テレビで取り上げてもらったことなどがきっかけでだんだん規模が大きくなっていきました。