子育ての不安も「生きていれば大丈夫」

── イベントやレッスンに参加されるご家族から、子育ての悩みを相談されることが多いそうですね。

 

蛯原さん:ご夫婦で働いている方が多く、仕事と同じように育児も頑張ろうと思っている方は、完璧にしなくてはという気持ちがプレッシャーになってしまっているように感じます。子どもの命を守りながら、ミルクは絶対3時間おきにとか、泣いたらすぐ対応しなきゃとか、育児の「こうしなくちゃ」にとらわれすぎてしまっているように思います。

 

それに、育児のなかで出てくる数字を気にされる方が多いです。育児本などで離乳食は何か月からスタートしましょうと書かれていたら、「その通りぴったりに始めなきゃいけませんか」とか、成長曲線と比べて「うちの子は体重がこのくらいしか増えていないのですが、どうしたらいいですか」と。書かれている数字はあくまで目安だと思ってもらえたらいいですね。

 

── どこまでが正解かわからなくなってしまう気持ち、よくわかります。

 

蛯原さん:私自身も母になってその気持ちが痛いほどわかりました。NICUで働いていたときは、赤ちゃんが泣いているというのは呼吸ができている証拠で。生きていたら大人だって泣くことがありますし、赤ちゃんならなおさら泣くだろうと思っていたのですが、実際に我が子を目の前にしたら焦ってしまって。それに、授乳だけは勤務中に経験がなかったので、特に1人目のときは神経質になってしまいました。子育てはもっとおおらかに構えて力を抜いていいもので、「生きていれば大丈夫!」という気持ちでいてほしいとレッスンで伝えることが多いですね。

 

── 英里さんの看護師と子育ての経験で説得力が増して、みなさん安心して相談できるんでしょうね。現在のお仕事のやりがいを感じるのはどんなときですか。

 

蛯原さん:少し緊張気味でレッスンにいらっしゃったパパやママの表情が途中から柔らかくなって、最後はハッピーオーラ全開で帰ってくださる姿を見るとやりがいを感じますね。会場全体の空気の流れが変わるのも感じます。

 

双子で生まれた私たちは保育器に入っていたのですが、看護師を目指して、その後NICUに配属されて。仕事から離れたことがきっかけでアパレルの仕事を経験できて、ベビーマッサージにも出会えました。これまでの人生の点と点がつながった感じがして、私はこの仕事をすべくして辿り着いたんだんだなと実感しながら、日々たくさんの赤ちゃんと向き合える幸せを感じています。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/蛯原英里