人生に「向き不向き」は関係ないと悟って

── 過去の「嫌になったら逃げる」葉月さんとはまったく違いますね。

 

葉月さん:結局は「自分がどうなりたいか」というところだけかなと、最近は思います。よく「この仕事は自分に向いていなかった」などという話を耳にしたりしますが、「自分に向いているか否か」ではなくて、「自分が真剣に向き合っているか」だと思うんですよね。私はたまたま、ボクシングに向き合ってはいますが、これが違うスポーツだったとしても自分がやるって決めて死ぬほど努力すれば、自分に向いたスポーツになるだろうなとも思っています。

 

── ボクシングを始めてから11年。芯の強さを感じます。

 

葉月さん:「石の上にも三年」といいますが、3年ではボクシングについて何も理解できなかったし、何年も繰り返していくことで理解がより深まり、それが「何事にもあきらめないで向き合う」という人生観にもつながっていったのだと思っています。

 

いまの私にとって、かけがえのない存在となったボクシングと出合えたり、人生を見つめ直すきっかけをつくってくれたりしたのは間違いなく弟の死です。だから、大きな舞台である世界戦のリングに立つことで「どうせ俺なんか」と言っていた弟に「何もなかった私が夢をみつけられたのは、あなたの存在があったから。それほど大切に思っていたんだよ」と言ってあげたい。

 

弟には2度と会うことはできません。でも、生きることに疲れたり嫌なことがあったりしても、自分が決めたことにしっかり取り組んで、成功した姿を天国の弟に見せていきたいと思っています。

 

取材・文/高田愛子 写真提供/葉月さな