81歳で父が亡くなり「心にボコッと穴が」

辛島美登里
お父さんは真面目でキッチリ、お母さんはオシャレが好きな明るい人だったそう

── 脳梗塞を発症して、どれくらい入院されましたか?

 

辛島さん:1か月ほど入院して自宅に戻りました。退院後は会話はなんとかできたんですけど、会話量が減って、入院前に比べて3分の1くらいになりました。歩行も誰かの支えが必要になって。退院後して4、5年は自宅で過ごしていましたが、私が盆と正月の年2回くらい帰省するたびに、父の状態が確実に悪くなっているのがわかりました。

 

父が自分で意思表示をすることも減ってきて、周りが「ご飯食べる?お腹いっぱい?」とそのつど確認するようになったし、私も実家に帰ったときは父のお世話をするように。朝、父をベットから起こすことからはじまって、ご飯を食べるときはスプーンで口に運んであげるとか。でも、父のお世話は公的援助をかりたがらない母がほとんどになっていたので大変だったと思います。

 

その後、さらに体調が悪化して2回目の入院をしましたが、自宅に戻ることはなく、父が81歳のときに亡くなりました。

 

── 徐々に容態が変化されたようですが、介護が始まって亡くなるまで、お父さんに対する思いは変わりましたか?

 

辛島さん:もともと口数が少ない人でしたし、父が生きている間は大きくは変わっていないと思います。むしろ、父が亡くなってからのほうが変化を感じますね。私はどうしても父より母とコミュニケーションを深くとっていたので、どちらかが先に亡くなるとしたら、母に残っていてほしいな、とすごくクールな考え方をしていたんです。

 

でも、父が亡くなったらボコッと穴が開くってこういうことなんだなと、初めて知りました。父の葬儀が終わって、事務手続きも済んでいくと、後からジワジワと悲しみが押し寄せてきて…。今までは何かあっても時間と共に少しずつ回復していきましたが、この思いは回復しないんじゃないか。ずっと心に穴が空いたままなのかなって思いましたね。