俳優の野波麻帆さんは、次女の出産後に家族と話していても意識が飛んでいくような感覚になったと話します。「家族がいてくれてよかった」という不思議な経験とは。

12時間かかった分娩の後に、感じた異変

── 野波さんは俳優業のほか、スタイリストとしても活躍していて、プライベートでは小学6年生と4年生の娘さんの子育てをされています。話は数年前にさかのぼるのですが、長女と次女の産後の経過はだいぶ違っていたそうですね。

 

野波さん:長女は2013年、次女は2015年に、ふたりとも同じ病院の同じ先生に診てもらって無痛分娩で出産したのですが、長女のときは安産で何事もなかったのに、次女のときはまったく違っていました。

 

野波麻帆さん
家族で訪れたモルディブのビーチに立つ野波さん

予定日を過ぎても生まれる兆候がなかったので陣痛誘発剤を使ったのですが、この薬が合わず腹痛や吐き気がありました。薬を変えてもらって無痛分娩の麻酔を打ってもらい無事に出産しました。12時間くらいかかったと思います。次女は何事もなかったのですが、私は出血が止まらなかったので止血剤の点滴を数時間してもらって。ようやく病室に戻ったときは夜になっていました。

 

最初は、自分の体を思い通りに動かせないことに戸惑いました。長女のときは産んですぐにスタスタ歩けていたのに、思うように歩くことも立ちあがることもできなかったんです。

 

── 産後はメンタルや体調に変化がある方が多いと聞きますが、ほかにも症状はありましたたか。

 

野波さん:麻酔が効きすぎてしまったのか、ホルモンが影響していたのかわからないのですが、呂律が回らなくなりました。そして、夫と話していても意識が飛んでいくような感覚になって。話している内容が自分でだんだんわからなくなってくるので、「これはやばい」と思って、しっかりしなきゃと思い直すのですが、またどんどんわからなくなっていって。

 

夫も私の顔がいつもと違うと思っていたようで、「大丈夫?」と気にしていました。その晩は、夫と長女が一緒に病室に泊まっていたのですが、出産して疲れているはずなのに一睡もできませんでした。眠れないまま仕方なくトイレに行くと、鏡に映る自分の姿を見てわけもなく笑いたくなってしまって。でもその状況を客観視できている自分もいて、「ちょっと私、おかしくなっちゃったのかな、自分に戻るためにはどうしたらいいんだろう」と考えることはできました。なのにどうしても笑いたくなってしまう。自分が自分ではないようで、コントロールできないことがすごく怖くなりました。