アポの電話やメールも自分で

── 1日のなかで俳優とスタイリストの仕事が同時並行することもあるそうですね。

 

野波さん:小学生の娘がふたりいるので、朝はまずご飯を作って学校に送り出すところからスタートします。そのあと、午前中のうちにリースのアポイントのメールや電話をするのですが、私もまだスタイリストとしては始めたばかりで、どこに問い合わせたらいいかわからないことも多いですね。

 

ブランドのアポイントと自分のドラマの撮影が重なることも多く、先にリース衣装をピックアップしてからドラマの撮影現場に行って、撮影が終わったらまた別の衣装を取りに行って、という感じで行ったり来たりしています。家族の夕飯は作りたいので、なるべく早く帰るようにしているのですが、間に合わない場合は夫が夕飯を作ってくれます。

 

野波麻帆さんと娘さん
家族で訪れたモルディブの水上コテージでふたりの娘さんと

── ご自身のスタイリングをされることもあるそうですが、俳優の仕事の際は野波さんにスタイリストさんがついて衣装の準備をしてくれていると思います。自分でスタイリストの仕事をしてみて改めて気づいたことはありますか。

 

野波さん:俳優として現場に入ると、すでに衣装が何パターンも揃っていますし、スタイリストさんは衣装に合ったインナーなどをパパッと出してくださるのですごく手際がいいなと思っていました。でも、その裏にどれだけの準備の時間をかけて動いてくれていたのかまでは想像できていなくて。現場の仕事が終わったあとも、スタイリストさんは全部服をしまって、またそれをブランドに返しに行くという仕事があります。自分でやってみて初めて、今まで見えていなかった部分に気づくことは多いです。

 

── Instagramでスタイリングのイメージを絵に描いた投稿を見ましたが、ものすごくお上手ですよね。どこかで学ばれていたんですか。

 

野波さん:いえいえ、完全に自己流で絵の才能はないのですが、この作業が好きなんです。衣装が揃ってからスタイリングを組む際に頭を整理するために絵に描いてみるのですが、そうすることで画角のイメージがつきますし、カメラマンさんに「この衣装は後ろから撮ってもらいたい」という提案もできます。準備してきたことがしっかり形になることへのやりがいはありますね。

 

iPadで描いているのですが、だいたい子どもが寝てから夜に作業することが多いです。絵を描きながらイメージを膨らませる作業がとても落ち着く時間でもあります。

 

── 二足のわらじで仕事をされていますが、今後の40代、50代をどのように過ごしていきたいですか。

 

野波さん:私はそのときそのときの感覚をキャッチしながら進んでいくタイプなので、それは今後も変わらないだろうなと思っています。今の自分が情熱を注げるものは何か、きちんと理解した上で生きていたいと思いますね。その場に留まるということはしないと思っているので、いくつになっても新しい扉を開けていこうという気持ちでいたいと思っています。

 

 

俳優とスタイリストの仕事をしながらふたりの娘さんの子育てをしている野波さん。夫で俳優の水上剣星さんとの家事分担は「お互いに自分が主体で考える」ことを大切にしているそうで、「ありがとう」の言葉は相手が家族のためにしている姿を見れば自然と出てくるといいます。自分ができることを全力で頑張ることが、結婚12年目になる夫婦の円満の秘訣だそうです。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/野波麻帆