お客さんに「いちばん美しい海」を見せたい

── ファンの方はうれしいでしょうね。ほかに、民宿経営で大切にしていることは?

 

宮良さん:一生懸命働いたお金で泊まりに来てくれるお客さんを喜ばせたい、といつも考えています。民宿宮良は、ほかの民宿と大きな違いがあるわけではなく、部屋数もそれほど多くありません。僕のこだわりは自然にあわせて、いちばん美しい海を見せること。波の高さや潮位、日の出・日の入り、太陽の位置、天候や風向きによって、海は毎日違う表情を見せます。

 

そのため、人間本位の時間軸で動くと、いちばんきれいな景色を見られないこともあります。たとえば、小浜島の近くに潮位が下がると現れる幻の島があるのですが、潮位が下がりすぎると石ころやごつごつした海底が見えすぎて美しくない。だから、あまり干上がりすぎず、太陽が海の色を美しく見せる位置にある時間帯を選びます。

 

僕は人間に合わせて計画を立てるシステム化された遊び方ではなく、自然に合わせた遊び方が好きなんです。もちろん時間が限られているケースもあるので、パッケージ化された遊び方も必要ですし、それをどうこう言うつもりはまったくありません。

 

でも、僕のところに来てくれるお客さんには、いちばん美しい瞬間を見せたい。だから、「この時間にツアーに出る」というような決まりはなく、待つときは待ちます。朝ごはんを食べてから「今日はこんな天候だから、雨が過ぎるのを1時間待とう」というときも、うちのお客さんは「忍に任せるよ」と待ってくれるんです。僕の好きな自然中心の考え方を理解して何度も来てくれるお客さんに助けられています。コスパやタイパを重視する観光や旅も必要ですが、僕が案内するからには、時間に縛られず、奥行きを感じるときを過ごしてほしいと思います。