楽しみながら思考力を鍛えるには

思考力を主に司っているのは、脳の前頭葉にある前頭前野という部位です。ここには、五感で得た感覚や言語情報、記憶のほかに、感情も集約され、それらをもとに行動や抑制など高度な判断が行われています。ですから、単に「脳を使って思考力を鍛える」だけではなく、笑ったり、感動したり、といった感情が動くような体験も、脳を刺激して、暮らしを豊かにすることができます。

 

たとえば、俳句や短歌を詠むのを趣味にするのもおすすめです。感動した風景や自然、湧き起こった感情などを作品に詠み込むには、五感をとぎすまし、感情を動かして、言葉を選ぶことになりますから、脳のさまざまな働きをする部位を広く活性できるところが、たいへんよいですね。

 

「俳句なんて自分には難しい」という方は、テレビを見ながらでも、楽しみながら思考力を鍛えることはできます。私がよいと思うのは「笑点」のようなお題が出る番組です。「〇〇とかけて〇〇と解く…」という「なぞかけ」に答えたり、あるキャラクターになりきって、おもしろいせりふを考えたりするのは、言語だけでなく、笑いや想像力に関わる脳の領域も刺激することができます。

 

じつは笑いと脳の関係はまだ明らかになっていないことも多いのですが、笑いには、脳が「楽しい」という「ごほうび」を感じる大脳辺縁系という部位や、ユーモアを理解する前頭前野などを広く刺激すると考えられています。

 

イラスト/斉藤ヨーコ 撮影/有坂政晴