「男運がない」雑誌の悩み相談きっかけでグラビアに
── 司法試験に合格されてからは、弁護士としてすぐに働き始めたのですか?
三輪さん:私が弁護士になった年は、弁護士業界も氷河期だったんですよ。私みたいに司法試験を何回も落ちている人は採用されにくい時代でした。 大学時代も就職氷河期だったので、二重で氷河期を経験しているわけです。東大卒の弁護士=キラキラの経歴だと思う人は、わかっていないと思う。そもそも司法試験に7回落ちる人って、東大生では少ない。みんなもっと見切りがいいんです(笑)。

── 最初は、どのような形で仕事を始めたのですか?
三輪さん:当時、自分と同じ修習生(注:司法試験に合格した後に、実務の研修を受けている人)の彼氏とおつき合いをしていて。彼が先に弁護士になっていたので、自分も弁護士の資格を得たら同じ事務所で一緒にやるつもりでした。それが、修習中に振られてしまって。「6年くらいつき合っていたし、きっと復縁できる」と信じて、いったん就職せずに既存の事務所の軒先だけを借りて自分で独立する事業形態にしたのですが、依頼が全然来なくて本当に苦労しました。しかも別れた彼氏は、半年もしないうちに結婚しちゃったんです。びっくりでした。こんなことあるんだな、と。
── そんなつらい経験が…。その後、雑誌の悩み相談への投稿がきっかけで新たな挑戦をされたとか。
三輪さん:男性向け週刊誌の人生相談に「男運が悪い私はどうしたらいいんですか」って相談したんです。そのときに相談担当のリリー・フランキーさんと構成の吉田豪さんが「東大卒の弁護士って、出オチみたいでおもしろいね」って言ってくれて、グラビアをやることになって。そこからテレビ局の人から声がかかり、番組に出演するようになって、どんどん仕事に繋がっていきました。「わらしべ長者」というか(笑)。いろんな経験に鍛えられたんだなって思います。
── 三輪さんのような「わらしべ長者」になるにはどうしたら…?
三輪さん:どうしたらいいんでしょうね(笑)。私も意図したわけじゃなく、人との出会いと運だけで生きてきましたから。そのうえで大事なのは、どんな人とも同じように接することなんじゃないかなと思っていて。飲み屋でたまたま出会った大学生の私に「弁護士になれ」って勧めてくれた林海象監督が、今も私のことをかわいがってくれるのは、今も昔も私が変わらないからだと思うんです。相手が映画監督であろうと、よく知らないおじさんであろうと(笑)、同じ態度だったから。そういうところにこそ人間の本質はあらわれるので、人によって態度を変えないという姿勢が、信頼につながっていくんじゃないかなと思います。
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2013年のグラビアデビューを機に仕事が増え、多忙を極めるようになった三輪さん。2015年に作家の樋口毅宏さんとSNSを通じて出会ったときは「これ以上おもしろい人にはもう出会えない」と思ったそう。第1子妊娠をきっかけに結婚し、2度の流産と不妊治療を経験しながら2児を出産した現在は、家事と育児のほとんどを夫が担い、三輪さんが外に出て働くという、独自の家族ルールを貫いているそうです。
取材・文/池守りぜね 写真提供/三輪記子