普通がいちばん難しい

── 行き着いた答えはありますか?

 

佐藤さん:まだ、模索中です。ただ、演じるために人の動きを常に観察するようになりました。こうして取材を受けている今もそうなんですけど、考えている人って上を見るなとか。細かい仕草でも、いろんな人の仕草やリアクションを見るようにしていると気づくことがあったりして。普通を演じるのが、実はいちばん難しい。おもしろいですけどね。

 

── 控えている舞台『醉いどれ天使』では戦後の東京が描かれ、闇市の診療所で働く美代を演じられますが、そんなふうに役作りしていらっしゃいますか?

 

佐藤さん:自分とは真逆のキャラクターなので、想像しながら演じています。女性らしい女性といった感じの役で、「そうよ」「イヤだわ」「ございますでしょ」などと、普段私が使わない言葉遣いをする役なんです。

 

佐藤仁美
舞台『醉いどれ天使』では自分とは真逆の「女性らしい女性」の役を演じる

演じるときにエセ関西弁みたいに不自然にならないように…と思っていたら、「あっ、普段遊んでいる新宿2丁目の友達の話し方と似ているかも」と(笑)。プライベートが思わぬ形で役作りに生かされて、2丁目の友達に感謝です(笑)。

 

 

30周年というキャリアを経てもなお、役作りに苦戦することもあるという佐藤さんですが、落ち込むことはないそう。悩むというよりも「こんな感情ってあるんだ」と自分を俯瞰して見ることで、ショックな出来事があっても引っ張られすぎないそうですが、そうした心境に達したのは30歳を超えてからだと言います。さまざまな経験を経て「何でも楽しむこと」が人生でいちばん大切だと話す佐藤さん。これからの活動がますます楽しみです。

 

取材・文/松崎愛香 写真提供/佐藤仁美(Instagramより)