「集中力がたりない」職場でも繰り返し注意された 

── 社会に出てからも、眠気との戦いは続いたのですね。

 

あこちさん:最初に働いた美容室では、半年で限界がきました。同僚たちは仕事が終わってからも遊びに行くほどパワフルなのに、私はすぐ帰って寝るしかなくて。それでも疲れが抜けず、つねに眠くて道具の消毒中に意識が飛びそうになることも。「なんで私だけこんなに弱いんだろう」って。

 

次に働いたメイド喫茶では通勤電車で寝過ごすのが日常でした。30分の距離なのに折り返し運転の終点まで行ってしまい、泣きながら遅刻の連絡を入れる。そんな日々でした。「自分が怠けているせいだ」と思い込み、メンタルクリニックを受診しましたが、眠りの問題にはたどりつけませんでした。

 

── それはどうしてでしょう?

 

あこちさん:日中眠いから、夜はできるだけ睡眠をとるようにしていました。だから「ちゃんと寝てる」と思い込んでいて、先生に「夜は眠れていますか?」と聞かれて「はい」と答えたんです。そうしたら「それなら鬱ではないですね」と。今思えば、寝ているようで眠れていなかったんですけど、当時はそれに気づけませんでした。

 

── その後、事務職に就かれたそうですね。どんな様子でしたか。

 

あこちさん:デスクワークは相性がよくなかったです。ずっと座って画面に向き合っているから、さらに眠くなる。気づかないうちに意識が落ちて「寝ているよ」とよく指摘されていました。でも自分ではその感覚がないんです。ガムを噛んだり、コーヒーを飲んだり、立って歩いてみたり。いろんなことを試しました。ふと起きると、眠気覚ましの飴が口の中から落ちていたこともあります。それでもやっぱりだめでしたね。上司からは「集中力がたりない」と繰り返し注意されていました。

 

── 上司や周りに相談できる方はいなかったのでしょうか。

 

あこちさん:上司に話してみたのですが、「俺だって寝てないけど頑張ってる!」と返され、結局、誰にもわかってもらえないんだなと。そうしているうちに信用をだんだん失っていきました。社内の伝達ミスでトラブルがあったとき、「また寝ていて聞いてなかったんじゃないの?」と疑われて。悔しくてチャット履歴を見せて説明したこともあります。理解はされませんでした。努力しても報われないと感じることが多かったんです。