「怠けてる」「仕事のミスが多い」。制御できないほどの眠気に襲われ、学校でも職場でも非難され続けてきたというあこちさん。異変を感じてから実に15年経って、自身の症状が病気だったことを知ることになります。

誰にも理解されない「強い眠気」を繰り返し

あこち
中学の入学式にて母と

── 制御できないほどの眠気に襲われる睡眠障害「ナルコレプシー」を抱える女性、あこちさん。周囲からは「ただ居眠りしているだけ」に見えるため、怠けていると誤解され、学校や職場でも理解されないまま15年間過ごしてきました。ようやく診断がくだったのは29歳のとき。そこに至るまで、数えきれないほどの葛藤があったといいます。そもそも「ナルコレプシー」とは、どんな病気なのでしょうか。

 

あこちさん:日中に強い眠気が繰り返し起こる睡眠障害で「過眠症」とも呼ばれます。夜間に十分な睡眠時間を取っていても眠くなってしまうのが特徴です。ナルコレプシーには1型と2型があって、1型は、突然の感情反応によって誘発される瞬間的な筋力低下または筋麻痺を伴う「情動脱力発作」を伴います。私は2型なので脱力発作はありませんが、突然、意識が落ちるように眠ってしまうんです。

 

── 眠りに落ちる瞬間は、どんな感じなんでしょうか。

 

あこちさん:眠いと思う間もなく、意識が飛んでしまうという感じですね。まばたきをしたら1時間たっていた、なんてことも。脳波を測ると眠り自体が浅く、途中で何度も目が覚める「中途覚醒」や、寝入りばなに生々しい夢を見る「入眠時幻覚」が起きていて、睡眠の質がとても悪いんです。たとえるなら、毎朝、徹夜明けのような倦怠感があります。でも、周りから見るとただの居眠りにしか見えないので「サボってるんでしょ」「眠いのはみんな同じ」と言われてしまう。そこがいちばんつらいですね。理解されないことが本当に多いです。

 

── 最初に「何かがおかしい」と感じたのはいつごろだったのでしょう。

 

あこちさん:中学2年の古文の授業中です。強烈な眠気に突然襲われ、気づいたら先生に「聞いてるのか!」と怒鳴られて。ノートにはミミズみたいな字が並んでいたのですが、まったく記憶がなくて。それまでも朝が弱いとは感じていましたが、意識が飛ぶようなことは初めてでした。

 

高校に入ってからは、もっとひどくなりました。朝がつらくて遅刻ばかり。授業中も寝てしまうから勉強にもついていけない。先生には「態度が悪い」と目をつけられ、母にはなかなか理解を得られず、学校にも家にも居場所がありませんでした。結局、高校は1年で辞めて美容の専門学校へ進み、卒業後は美容室で働き出したのですが、ここでも眠気がひどくて。