診断がつくまで15年、長いトンネルだった

── 理解者がいないのはつらいですよね…。「ナルコレプシーかもしれない」と気づいたきっかけはなんだったのでしょう。
あこちさん:友人に電話で相談したとき、「それってナルコレプシーっていう病気かもよ」と言われたんです。その子は、睡眠時無呼吸症候群の経験があって、睡眠の病気に詳しかったんです。そこで初めて「ナルコレプシー」という言葉を知りました。最初は、半信半疑でしたが、調べてみたら「過眠症」という言葉が出てきて。そういえば以前、別のメンタルクリニックで「過眠症の可能性がある」と言われたことを思い出したんです。
そこから地元の精神科を受診して、睡眠医療の専門病院を紹介してもらいました。検査は4日間の入院。最初の2日は病院の生活に慣れる期間で、後半2日で本格的な検査をしました。カフェインもタバコも、眠りを妨げるものは全部断ち、夜と昼、両方の睡眠を詳しく調べたんです。そこで正式に「ナルコレプシー2型」と診断されました。
脳を覚醒させる薬を処方されて起きていられる時間が増え、生活の質が格段に上がりましたね。
── 診断がつくまで15年── 。長いトンネルでしたね。
あこちさん:長かったです。自分をずっと責め続けてきました。「気合いがたりない」「怠けてる」と言われるたびに、私自身もそう思いこんでいました。寝ても寝ても眠くて、どうしてこうなるのか、原因がわからなかった。
検査結果を聞いたとき、「理由があったんだ」と思えたんです。病名がついた瞬間、体の力が抜けて、ようやく出口が見えた気がしました。医師からは「これでフルタイム勤務していたなんて、本当にすごいことですよ」と言われて。その言葉を聞いて初めて「自分は頑張ってきたんだ」と感じました。自分を認めることができず、苦しんできた15年間がようやく報われたような気がしましたね。
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「ナルコレプシー」と診断がつき、薬の投与で生活の質が上がったと語るあこちさん。しかし、まだまだ世間では病気への理解が乏しく、周りから心ない言葉を投げかけられることも多いといいます。現在はSNSや動画にて病気の症状について発信を続けながら、「あなたは悪くない」と伝えていきたいと語りました。
取材・文/西尾英子 写真提供/あこち