憧れの服飾系への進学は体型が理由で断念するも
── 子どものころから自分には取り組むべきことがあると感じていたとは。「みんなと違う」「つらい」などと考えて自分を否定するのではなく、病気をもっているからこその 「使命感」のようなものがかなり早い段階からあったのですね。
後藤さん:そうなんです。小さいころからファッションを楽しんだり、イラストを描いたりして自分を表現するのが好きでした。きっと自分は、大人になっても多くの人に何かを伝えていくんじゃないかなと感じていたんです。
ただ、その思いを形にするまでには紆余曲折ありました。高校時代、進路を考えるときは「軟骨無形成症の人に合う洋服を作れるようになりたい」と考え、じつは最初は服飾系の大学に進学したんです。ところが、体が小さいことがハンデになってしまって…。わたしの手にははさみが大きすぎて、うまく扱えませんでした。布地や裁縫道具など、たくさんの荷物を持って移動するのもこの体では難しかったです。「わたしの体型では洋服を作るのは難しいな」と徐々に感じるようになり、悩んだ末に大学は2年生で退学しました。

── 当時は挫折感などもあったのではないでしょうか。
後藤さん:そうですね。「もっと洋服について学びたかった」という心残りはありました。でも、ファッションは仕事にするのではなく、自分で楽しむものにしようと気持ちを切り替えたんです。新たな進路として、小さいころから好きだったイラストの勉強をしようと思い、イラストとデザインの専門学校に通い直しました。ブログでファッションを楽しむ様子を発信し始めたのはこのころからです。
── モデルや俳優の仕事はどんな経緯で始めたのでしょうか?
後藤さん:わたしはすごくご縁に恵まれていて、たまたま知り合った人から声をかけていただくといったことが多いんです。モデルを始めたきっかけは、誰もがファッションを楽しめる社会をつくることを理念とする「ユニバーサルファッション協会」が主催するパーティーに参加したことです。そこで知り合ったデザイナーさんから声をかけられ、モデルとしてファッションショーに出ることになりました。
俳優業を始めたのも偶然の出会いからでした。あるときアーティストをしている知人の個展の打ち上げに参加したとき、隣にいた俳優の方から「次の舞台に出演してみませんか」と誘っていただきました。それがきっかけとなって舞台や映画、映像作品に出演する機会に恵まれました。
モデルや俳優の仕事に取り組んだところ、すごく楽しくて。「わたしは洋服を作るよりも、人前で自分を表現するほうが向いているんだ」と気づきました。