人の目を気にした時期もあったけれど

── お話をうかがっていると、いろんな方との出会いによって活動が広がっているのが伝わります。人との縁に恵まれているのですね。

 

後藤さん:本当にありがたいです。「どうしてなんだろう」と自分でも不思議なのですが、いつもやりたいことや叶えたい夢について、言葉にしているのは大きいかもしれません。わたしの根底には「ほかの人とは違う体だからこそできることがあるはず」という気持ちがあって。わたしが活動することで、軟骨無形成症の存在を知ってもらいたい、世の中にはいろんな人がいると伝えられたらいいなと考えているんです。その思いに賛同してくれる人に、自然と引き寄せられる気がします。

 

それに、挑戦するのが好きでもあります。迷うくらいなら、思いきって行動しようと決めているし、一度決めたことは絶対にやり遂げると決めているんです。勇気を出して一歩を踏み出すと、新しい道がどんどん拓けていくんだなと感じます。

 

── とても前向きで、何事も楽しみながら挑戦されているのが伝わってきます。

 

後藤さん:でも、わたしもずっとポジティブだったわけではないんです。高校生のころは人の目が気になって、引っ込み思案だった時期がありました。中学生までは物心つく前からわたしを知っている幼なじみやわたしを受け入れてくれている友人に囲まれていたのですが、進学した高校には、知りあいがほとんどいませんでした。だから「わたしにしかできないことがあるはず」という気持ちは抱き続けていたものの、「ほかの子からどう思われるだろう…?」と、意識してしまったんです。

 

── 積極的に活動されている後藤さんでも、引っ込み思案な時期があったんですね。

 

後藤さん:以前は知らない人からジロジロ見られるのも、好奇の目にさらされているようで苦手でした。もちろん、わたしの存在を知っていて、温かい眼差しで見てくださる人もいて、それはとてもうれしいのですが…。最近はわたしも大人になったからか、とらえ方が変わってきて。「わたしにとっては自分が小さいことが当たり前だけど、見慣れない人からしたら、珍しい存在に感じられるんだろうなあ」と思うようになりました。

 

ジロジロ見てくる人にも悪気があるわけではないとも感じます。「ほかの人とは見た目が違う人がいる」ことを知らない、周囲にいないだけなんだろうな、と。障害があったり、見た目に特徴があったりする人も特別な存在ではなく、ごく「ふつう」の人たちです。そのことを理解してもらう機会が増えれば、変わってくるだろうなと思います。

 

最近はパラリンピックもメジャーになってきているし、当事者の人たちもいろんな場所で発信するようになりました。以前よりもずっと、理解する人が増えている気もしています。わたしもさまざまな表現を通し、「世の中にはいろんな人がいる。それはとても素敵なことなんだよ」ということを伝えられたらいいなと思っています。

 

 

さまざまな人の縁にも恵まれ、後藤仁美さんはモデルや役者など幅広く活躍しています。人の目を気にしていた時代もありましたが、いまは「自分にできることをしよう」とつねに前向き。そんな後藤さんは2017年に結婚し、昨年第1子を出産しました。低身長ゆえ、子育ての苦労はあるそうですが、自分を育ててくれた両親のように励みたいと、奮闘中です。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/後藤仁美