先天性の軟骨無形成症で身長115センチと聞けば、ふだんの生活も大変なんじゃないかと思うかもしれません。しかし、当事者の後藤仁美さんはどこ吹く風で、東京パラリンピックの閉会式にも出演するほど活動的です。そのパワーが生まれたきっかけは何だったのでしょうか?
出発点はブログだった
── 後藤さんは先天性の軟骨無形成症により身長は115センチ。小さな体型を活かし、モデルや俳優として活躍され、東京パラリンピックの閉会式にもドラムパフォーマーとして出演されています。さまざまな活動をされるようになったきっかけを教えてください。
後藤さん:イラストやデザインを学ぶ専門学校に在学中、自分のファッションやコーディネートを自分の写真つきでブログで発信したのが最初のきっかけです。わたしは小さいころからおしゃれが大好きでした。でも、体型に合った洋服がなかなか見つからなかったんです。
わたしは軟骨無形成症で、特徴のある体型をしています。軟骨無形成の成人男性の平均身長は約130センチ、成人女性の平均身長は約124センチ。胴体は一般成人と同じくらいですが、手足が短いんです。買い物に行っても、サイズが合わなくて気に入った洋服を買えないなど、残念な思いをしてきました。
それでも試行錯誤して、洋服探しや着こなしにこだわって。たとえば、胴長短足なのをバランスよく見せるよう、できるだけハイウェストの服を着るとか、トップスは首から袖の下部分まで斜めの切り替え線が入っているラグラン袖にして、手が短いのを目立たないようにするといったことです。
おしゃれを楽しんでいる姿をブログで発信したところ、大きな反響がありました。わたしと同じ軟骨無形成症の人から「とても参考になった」という声や、軟骨無形成症について知らない人からも「かわいい」という言葉をいただけるようになりました。

── 大好きなファッションの分野に集中し、発信したことで道が大きく拓けたのですね。
後藤さん:洋服が大好きだったことは、たくさんの気づきや出会いをもたらしてくれました。子どものころからずっと、自分はほかの人と体型が違うとは気づいていましたが、それをネガティブにとらえなかったんです。むしろ、ばくぜんとではあるものの、「みんなと違う体型で生まれたわたしだからこそ、できることがあるはず」と考えていました。
ブログで情報発信を始めたのも「おしゃれが大好きな自分でさえ洋服探しには苦労しているんだから、ほかの軟骨無形成症の人たちはもっと大変かもしれない。でも、工夫すればファッションを楽しめると伝えたい」と、思ったからなんです。