「病気と戦うお子さんはヒーロー」

── 活動を始めてから心境に変化があったと伺いました。

 

石田さん:団体を立ち上げて活動をしていること自体が私のグリーフケアのひとつになっていると思うことがあります。ドイツのこどもホスピスで、息子と過ごしたことを考えているときに、すごく心が安らぐんです。やはりそれは、息子とのいい思い出が詰まっているからで、闘病を頑張っていた息子の頑張りを誇りに思えているからだと思います。

 

いずれは福井県にこどもホスピスの施設を作ることを目標に活動していますが、入院している間の支援はあるものの、一時退院や退院後の支援はまだまだたりていません。自分の家で過ごせることがいちばんですが、病院と家以外にも選択肢があっていいと思っています。

 

私たちの活動は闘病経験者や、医療関係者が携わっているものというイメージが持たれがちですが、まったくそんなことはありません。私の理想は、誰でも気軽に立ち寄ることができるこどもホスピスです。地域の交流が自然と生まれる場所になったらいいなと思っています。

 

ふくいこどもホスピスの家族会
サンタさんのプレゼントに大喜び!ふくいこどもホスピスの家族会の様子

── 情報が入りやすい現在も、支援が必要な方はまだまだ多いと考えているそうですね。

 

石田さん:本当に届いてほしい方にまだこの活動が届ききっていないと思っています。それに、闘病に対する考え方も変わったらいいですね。ある看護師さんが、「病気と闘ってる子どもさんってヒーローみたいな存在なんだよ」と話していて、「今までそういう風に考えたことなかった」と思いました。闘病中のお子さんを持つご家族も、ヒーローの父親、母親という感覚があれば、こどもたちも勇気や自信が持てると思います。

 

── やはり闘病中のお子さんはかわいそう、ご家族は大変そうという思いが先行する方は多いと思います。

 

石田さん:息子の病気がわかってから、私自身もかわいそうという目で見ていたところがありました。もちろんわが子をかわいいと思う気持ちは変わらないのですが、「息子は病気と頑張っている、かっこいいヒーローだ」という目線では見ていなかったと思います。闘病中にも変わらず見せてくれる笑顔や、優しさ、それはヒーローにほかなりません。そういう視点をもっと世の中に伝えていけたらいいなと思っています。

 

今なら、「息子は小児がんで亡くなってしまったけど、すごく頑張ってたんだよ」と胸を張って言えます。かつて私も、心配をかけたくないあまりに息子のことを話していなかった時期がありましたが、心配をかけたくないから真実を隠すというのは、息子の頑張りも隠してしまっているのと同じです。誰もが人と助け合って生きているということを決して忘れず、優しい社会になってほしいという願いを込めて、活動をしています。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/石田千尋