福井県の石田千尋さんは、息子さんが小児がんのステージ4と診断され闘病生活を送っていました。ところが、息子さんが亡くなってから体調がすぐれず、引きこもるように。息子さんの年齢を越える月日が流れ、「このままではいけない」と石田さんがとった行動とは。

朝起きては亡くなった息子を探して

── 夫の仕事の都合でドイツに移住したあと息子の夕青(ゆうせい)くんが小児がんと診断され闘病していたそうですが、2019年に1歳9か月で看取られたと伺いました。その後、石田さんご自身の体調がよくない日が続いていたそうですね。

 

石田さん:しばらく病院に行っていなかったのですが、病院で診断される前よりだいぶ早い段階からパニック障害の症状が現れていたと思います。息子が亡くなって、夫婦ともに心がポキッと折れてしまった状態でお葬式を執り行いました。

 

石田千尋さんと息子の夕青くん
ドイツの病院で闘病中の夕青くんに付き添う石田さん

動悸やめまい、息切れ、不眠、食欲がないなどありとあらゆる症状があり体が思うように動きませんでした。テレビで子育て中の動物の映像が流れれば大泣きして、ドラマで「ママ」というセリフが聞こえてきたらドキドキしてしまって。起きた瞬間に、「あれ、私母親だったと思うけど、息子はどこ?」と探してしまうなど、精神的にかなりきていたと思います。

 

生まれてからずっと息子と一緒に寝ていたので、息子がいないと眠れなくなってしまっているような感じでした。眠れないので起き続けていて、体力の限界が来たらその時点で寝るというような生活です。

 

── 周りの方に相談したことはありましたか。

 

石田さん:知人が事前に息子のことを周囲の方に伝えていてくれたものの、言い方が悪いのですが、やっぱり腫れ物に触る感じでものすごく気をつかわれているのがわかりました。それがだんだん申し訳なくなって。久々に会った方から「元気でよかった」と声をかけられたことがありました。その通りだと思います。落ち込んでいる姿を見せられても、みんなどうしようもなくなるよなと思っていたので、心配をかけまいとなるべく元気な感じで取り繕っていました。もちろん、息子を失って元気なわけはありません。

 

でも、それを聞いて私は「元気でごめん」と思ってしまいました。「子どもが亡くなってるのに、私だけ元気に見えてごめんなさい」って。絶対に誰もそんなことを言っていないのはわかるのにそう受け止めてしまって、人前に出るのがだんだん怖くなってきました。人に会うかもしれないと思うと外に出られなくなり、家に引きこもるようになっていきました。

 

── 誰も悪くないのに、せつないです。

 

石田さん:昔から仲がよかった友人には息子の病気のことも伝えて、お葬式の連絡もしたのですが、そこから先は連絡をしていません。いきなり子どもが亡くなった話を聞かされても、きっとみんなどうしたらいいかわからなくて困ってしまうと思いました。

 

相手を悲しませてしまうだけだし、自分の心の整理もできていない状態で、急に泣いてしまうことがあるかもしれない。私自身もどうしたらいいのか正解を提示できないので、とにかく申し訳ないという気持ちばかりでどうしようもなく、自分から息子が亡くなったことは言わないようにしていました。