保育園児のころから「私はこういう手だから」
── 小さいころはどんなお子さんでしたか?
Lisa13さん:私は物心ついたころからアートとかファッションが好きで、保育園でも絵を描いたり、ひとりで遊んだりすることが多くて。「右手を理由にいじめられましたか?」とよく聞かれますが、周りの子たちとタイプの違う、独特なキャラだったせいか、いじめの対象にならなかったんです。
こう話すと、「どうしたらいじめられずに済みますか?」と質問されることもあるんですけど、結局は自分をしっかり持つこと、小さいときから常に「私はこうなのよ」っていう気持ちを持ち続けることがいちばん大事だと思うんです。両親には「友達に『なんで右手がないの?』って聞かれたら、『生まれつきだから』って答えればいいよ」と教えられていました。だから、右手のことを聞かれたときはいつも、「お母さんのお腹の中にいるときから私の手はこうだったんだよ、君たちはその手だったんだね」って返していて。そう言えば、幼いながらに納得してくれるのか、その場はたいてい丸く収まっていました。

── ほかの子とちょっと違う世界観と「私は私」という信念が持っていたから、からかわれることもなかったんですね。
Lisa13さん:なかったですね。私の場合は自分の障害を当たり前のことだと思っていたし、「私は最初からこういう手だから」ってあっけらかんとしてたから、周りも「そうだよね」「その手、かわいいよね」って認めてくれたんじゃないかな。逆に隠してしまうと、いじりの対象になってしまったり、腫れ物に触るように距離を置かれてしまったりする気がします。
── そういう対応が最初から自然とできていたんですね。
Lisa13さん:自然と身についていたのは、両親の育て方が大きいと思います。父は真面目で、曲がったことが大嫌いなタイプ。母は明るく前向きで、メソメソしているところは見たことがないんです。そんな父と母からは、「右手のことで何か言われたら、言い返しなさい!」と、ずっと言われて育ちました。基本的にふたりとも心が強く、めったなことで折れないので、そういうところを私は色濃く受け継いでいるなと思います(笑)。
── 自虐的にならないというか。
Lisa13さん:はい。自己肯定感アゲアゲな家庭でした(笑)。家族の会話も多くて、保育園のころから「今日はこんなことをして遊んだ」とか「こんなことがつらかった」とか、その日あったことを全部、親に話していました。それが家族と過ごすなかでいちばん大事なことだと思っていて、大人になった今もそれは変わりません。
── コミュニケーションを大事に、Lisa13さんの気持ちを尊重してくれる家庭環境だったんですね。ご両親からよく言われた言葉はありますか?
Lisa13さん:「できないことが人より多いぶん、倍努力しなさい」というのはずっと言われてきました。それは音楽活動をしている今も同じです。あとは、「どうしてもこの人に勝てないなと思っても、競うんじゃなくて見習いなさい」と。その考えがしみついて、自然と「悟り系」になれた気がします(笑)。
──「人の倍努力しなさい」と言われるとプレッシャーに感じる子もいると思うのですが、Lisa13さんは努力することを大変だとは感じなかったですか?
Lisa13さん:はい。努力することは、物事を楽しむ過程だったので。人と比べて「あんなふうにできたらいいのに」と思うより、「あの子は手があるからできるけど、私はできないから自分なりにやり方を見つけよう」と考えるクセがついているというか。簡単にできなくても、どうにかできる方法を探していく。そのなかでいちばん努力したのがギターなんです。