子どもに申し訳なく思ったことは

粕谷幸司
粕谷さんの入学式に母・友子さんと

── 幸司さんへの接し方で意識されていたことはありますか?

 

粕谷さん:見た目が違うことで劣等感を抱かせたくなくて「真っ白で本当にかわいいね」「お人形さんみたいに素敵だね」と前向きな言葉をかけ続けてきました。おかげで息子は自分の見た目にコンプレックスを抱くことがなかったようで、それはよかったなと思います。

 

情報がまったくなかったので、毎日が試行錯誤でした。「あの看板の文字は見える?」「まぶしい?」と本人に確認しながら私自身も理解していった感じです。

 

── 幼稚園や小学校に上がるときは、事前説明に行かれたそうですね。

 

粕谷さん:髪と肌が白く視力が弱いこと、日焼けを避けたほうがいいことを伝え、「それ意外は普通の子どもです」とお伝えしました。当時は病名も情報もなく、先生方も手探り状態だったと思いますが、受け入れてくださって感謝しています。

 

ただ、視力に関しては親としてもっと詳しく伝えるべきだったと思っています。あとになって本人から「黒板が見えなかったから自分でいちばん前の席にしてくださいとお願いしていた」と聞き、申し訳なくなりました。学校とのつながりを保つため、行事には必ず参加し、主人にはPTAの役員をお願いし、積極的に関わるようにしながら見守りました。兄たちもよく面倒を見てくれて助けられましたね。

 

── 進路については、どのように考えてこられたのでしょう。

 

粕谷さん:高校進学の際は、プールに屋根があるかなど、紫外線対策ができている学校を探し、見学に回りました。最終的には本人が進路をしっかり考えていて、自分で学校を決めてきましたので安心しました。子どものころから、自分で判断しなくてはいけない場面が多かったからか、自立心の強い子に育ってくれたのは幸いでした。

 

── できないことを悲観せず、幸司さんの特性をありのままに受け止め、前向きに接してこられたのですね。

 

粕谷さん:そのときどきで精いっぱい向き合ってきたつもりでしたが、私自身、自営業の家に嫁ぎ、家業に夫の両親の世話、親戚づきあいと、やるべきことに追われ、子どものことがあと回しになってしまったところがあります。

 

寂しい思いをさせてしまったとも思いますが、それでも周りに助けられながら自分の居場所を見つけて成長してくれたことに、感謝をしています。