「お母さんが笑ってる!」と言われ驚いて

── 家業や親族づき合いがあるなかで、3人のお子さんを育てる日々は大変だったと思います。

 

粕谷さん:ある日、子どもの言葉にハッとさせられた出来事がありました。幼い子どもたちを連れて久しぶりに友人の家に遊びに行ったんです。夢中でしゃべっていたら、長男が「お母さんが笑ってる!」と驚いていて。ショックでした。忙しさのあまり、しかめっ面ばかりしていたんだと反省しました。そのときから「笑って過ごそう」と決め、私自身も強くなった気がします。

 

── 現在、幸司さんは、アルビノ当事者の視点からメディアで精力的に発信されています。自分らしく生きる姿は、お母さんの目にどう映っていますか。

 

粕谷さん:頑張っている姿を見ると、うれしいですね。当事者の経験談を発信することは、同じような子を持つ親御さんにとって、とても参考になるのではないでしょうか。アルビノの人がどんなふうに生きているのか、幸せに暮らせるのかを当事者の立場から伝えることで、親御さんを安心させるメッセージになるといいなと思います。私自身、幸司を育てるなかで、障害を持つ方の親の気持ちが少しわかるようになりました。当時はわからないことだらけでしたが、いろいろなことを勉強させてもらったと思っています。

 

 

アルビノとして生まれてきた息子に対して、前向きに子育てをしてきた母・友子さん。当の本人である粕谷幸司さんは、小学校入学当初こそ人との違いに戸惑ったことがあったそうですが、母のそうした言葉がけのおかげで、「これは自分の特徴なんだ」と前向きに受け止められるようになったそう。現在はアルビノ・エンターテイナーとして、当事者の思いを発信しています。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/粕谷幸司