不妊治療を諦めてがん治療を選んだ

── 病気がわかったこともショックなのに、ご自身で決断しなければいけないのは大変でしたね。
藤原さん:そうですね。今までの人生のなかでいちばん悩んだと思います。この3つのなかから選択しなくてはいけないことは大きな決断で、本当につらかったです。ただ、決めろと言われてもどうしたらいいかわからないので、まずはインターネットで同じ病気の経験者の話を検索しました。そうしたら、0期の人の話ってほとんどないんですよ。私より症状が重い人の話はあっても、0期の体験談がほとんどないことに驚きました。
それで、乳がんだったことを公表していた仕事の先輩に、相談することにしたんです。私が乳がんになったことを話すと、先輩はすぐに私をお店のトイレに連れていき、自分の胸を見せてくれました。私は知らなかったのですが、先輩は両胸を全摘していて…。先輩は「命に比べたら胸がなくなることはたいしたことではない」と。再建についても「私が胸をアピールするような仕事なら必要だけど、今の私には必要ないから」とすごく明るく言う先輩を見ていたら、病気がわかってから暗くなっていた気持ちが明るくなったのを覚えています。
── それで病気と向き合っていく決心ができたんですね。
藤原さん:そうなんです。ただ、もうひとつ決断しなければならないことがあって。私は当時、不妊治療をしていました。不妊治療中は女性ホルモンを増やす薬を服用していましたが、乳がんでは女性ホルモンを減らす必要があり、やらなければいけないことが真逆だったんです…。不妊治療も約2年行っていたので簡単な決断ではなかったですが、夫と話してやはり命、がん治療を優先することになりました。