治療法は自分では決断できなかったけれど

── 手術はどの方法を選ばれたのでしょうか?
藤原さん:考えた末に「部分切除+放射線治療」をすることに決めました。先生に伝えに行ったのですが、そうしたら先生はすごく驚かれて…。「もう一度よく考えてきてください」と言われたんです。こちらとしてはしっかりと考えて、選択肢の中から選んだのですが、先生としては想定外だったようで、「部分切除だと形を保つ自信がない」と。私の体の場合、しこりが4cm×4cmに達していたのでサイズ的に難しい手術だったようで、先生のなかでは最初から2択だったようです。提案しておきながら「自信がない」と言われても…と思いましたが、部分切除は先生が想定していた答えではないと気づきました。
── それは戸惑いますね。
藤原さん:そこからまた悩んだのですが、病院に通いながら、看護師さん3人に「もし自分ならどうするか」と話を聞いてみたんです。そうしたら聞いた3人が全員、「私なら全摘出にする」と。全摘出のほうが再発のリスクは少ないし、胸の再建についてはいつでもできると。病院には80代でも再建しに来る人もいるし、再建については全摘出したあとに考えても遅くはないと言われました。それで、私も左胸を全摘出することを決め、先生にお願いしました。自分だけではなかなか決断できなかったと思いますが、いろいろな人たちの意見が私をあと押ししてくれたと思うので、私の場合は思いきって周囲に相談してよかったと思います。
…
「左胸全摘出」という治療方法を決断した藤原さん。手術前には胸をお別れするために、左胸を写真に残しました。その後、手術は成功。しかし、再発率は1%だったにもかかわらず、1年後にまさかの乳がんが局所再発します。再手術、放射線治療を経て、現在は乳がん発覚から7年が経過。元気に過ごしているそうです。
取材・文/酒井明子 写真提供/藤原宏美