卵子=母親ではない。私を産んでくれたのがお母さん
── 20歳で初めてご自身のルーツを知ったのですね。
erincoさん:はい。ものすごく混乱して、とにかく涙が出てきました。そこに母が帰ってきたので、感情がぐちゃぐちゃのまま「私、お母さんの子じゃないんだね?ハーフ(ミックス)なんでしょ」という言葉をぶつけました。それを聞いた母は「そんなことない」とだけ言って、すねたような顔をして自分の部屋にこもってしまいました。母のそんな表情や行動は初めて見るものだったので、これは母には言っちゃいけないことなんだと悟りました。それ以降、私にとっての両親は父と母だけなんだ、と思い直し、自分からそのことについて触れることはありませんでした。母は一度も私の出生について語ることなく亡くなりました。
── 親族などから何か聞く機会はあったのでしょうか?
erincoさん:20歳で自分の出自について知ってから、母の妹にあたる叔母に聞いたことがあります。「私ってハーフ(ミックス)だったんだね。お父さんから聞いたよ」と言うと、「そうだよ。お母さんは口が堅いし頑固だから絶対に言わないと思うけど」と答えてくれました。
── 卵子提供や体外受精のことを知って、どう受け止めましたか?
erincoさん:不思議でしたね。そういう技術もあるんだなとも思いつつ、じゃあ私とお母さんはどういう関係なんだ?と考え出すと混乱していました。でも、1年ぐらいじっくり時間をかけてたどり着いた結論は「卵子=母親ではない。私を産み、育て、一緒にいてくれたのがお母さんだ」ということです。ものすごく愛されて大切に育てられたので、あの両親だからいまの私がいるんだなと実感できるようになりました。