思春期は自分の顔を鏡で見ては悩んだけれど
── ご自身はどんな幼少期を過ごされたのですか?
erincoさん:誰にでも話しかけるような明るい子でしたし、木登りやアウトドアが大好きでやんちゃな子でした。でも小学校高学年になるにつれ、周囲にミックスルーツの子がいなかったこともあり、外見をからかわれるようになって、人見知りになってしまいました。多かったのは「ガイジン」と言われることです。あとはバイ菌扱いをされて、菌がうつると言われることもありました。身体的に何か危害を加えられたわけじゃないですけど、言葉で言われるのが当時はストレスでした。からかってくる子は男の子が多かったので男の子に対して苦手意識ができ、中学時代は男子と話した覚えがないです。
── 当時、学校の先生や両親に相談などされたのですか?
erincoさん:両親には、からかわれていることは伝えていました。父も母も「エリがかわいいから、からかってくるんだよ」「気にしなくていいよ」とポジティブな様子だったので、あまり深刻にならずに済んだのかもしれません。
でも、小学校高学年から高校2年生まではずっとおとなしかったですね。とにかく自分の顔を鏡で見て、ほかの子と何が違うんだろうと悩み、鼻をつぶしてみたり、目を細くしてみたり…、くるくる巻いたカーリーヘアは本当に嫌いで縮毛矯正をしてストレートにしていました。
── 高校2年生で何か転機があったのですか?
erincoさん:学校の部活でバドミントン部に入っていたのですが、そこで部長になったことと、ラーメン屋でアルバイトを始めたことで元気に声を出す機会や今まで話したことがなかったような相手とも話す機会が増えたのがきっかけです。そこで「そうだ、人と関わるのって、おもしろかったんだ」という、本来の性格を取り戻したような感じです。
男性への苦手意識も、部活では男子とも話さないといけないし、ラーメン屋は男性客の方が多いし、だんだん慣れて薄れていきました。その後スポーツジムで働いて自分のレッスンを持つようになると、もっといろんな方と話す機会が増えましたし、いまは人と話すのが大好きです。お店でも店員さんにどんどん話しかけちゃって、「コミュ力おばけ」って言われています(笑)。
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両親ともに高齢での出産だったため、若くして両親の介護や看取りも経験したというerincoさん。特に要介護レベル4と認定され、起き上がることもできない父の介護は精神的に負担が大きかったそう。「どんどん私が知っているお父さんじゃなくなっていく」と感じ、次第に自分自身が摂食障害やうつ病に悩むようになりました。その後両親をしっかりと見送ったことで、少しずつ前向きに生きられるようになったといいます。
取材・文/富田夏子 写真提供/erinco