出るからにはメダルを狙って戦う
── 現在は、社員として働きながらビーチバレーボール選手としても活動されているそうですね。
堀さん:現在所属する会社(大成温調)からお声がけいただき、主に会社がアスリートを応援するサイト「LIVSON×SPORTS」の記事作成や所属する各選手の日程管理、成績などの情報を更新するオフィスワークを担うIR広報部員として働いています。ふだんは目安として、9時から16時までデスクワークでの仕事を行い、退社後、移動して19時ころから約2、3時間ビーチバレーの練習を行っています。
会社自体、2017年からビーチバレーの普及に携わり、大会の協賛や選手支援に積極的で、障がい者支援も視野に入れていて、デフビーチバレーのサイトをご覧になっていただいた際に、私たちのペアを見つけてくださり、声をかけてくれたそうです。
私自身は社会の一員として働きたい気持ちが強く、会社が意図を汲んで広報部員として席を用意してくれて、競技費用の支援もいただけていることを本当にうれしく思い、応援してくれることへの感謝しかありません。いまは仕事を始めたばかりなので、役割をまっとうするので精一杯です。でも、まだ具体的なものは見えてはいませんが、いずれは障がい者アスリートの立場だからこそわかる、ほかのアスリート支援を担えたらと思います。選手としてもこの恵まれた環境を活かし、応援してくれる人たちのためにも、デフリンピックでいい成績を出そうと思うようになりました。

── これまでいろいろと人間関係などご苦労されたなかで、いまは仕事もビーチバレーも目標を持った日々を過ごしていると思います。
堀さん:伊藤さんと組むデフビーチバレーは練習を繰り返し、技術レベルもあがったことで成績が向上。昨年は日本チャンピオンになり、今年の日本代表選考会でも準優勝でデフリンピックの出場を決めました。ただ、とんとん拍子で成績があがったわけでなく、最初はバレーボールとビーチバレーの違いにとまどいました。ビーチバレーは地面が滑りやすい砂だし、チームも2人しかいない(バレーボールは6人制)。おまけに屋外のスポーツなので、とくに風の影響は大きい。どのくらいの高さにトスを上げるとペアの相手が打ちやすいかなど、2人しかいないからこそ、瞬間的な判断も求められます。
逆にビーチだからこそのおもしろい部分もあり、下が砂だから思いきって飛び込んでボールが地上に着くスレスレであげることができたり、6人制とは違って、スパイク、レシーブやトスなど、プレーの機会が増える楽しさもあります。瞬間瞬間で、お互いがプレーをとっさに判断していく面でもおもしろさを感じます。
── 現在の目標はやはりデフリンピックのメダル獲得でしょうか。
堀さん:出場するからにはメダルが大きな目標であり、実際に狙える位置にいると思っています。伊藤さんとの連携や技術はどんどん上がっているし、いいパフォーマンスを発揮して、結果がついてくればうれしいです。
これまで人間関係や将来の不安などあったけれど、ビーチバレーに出会えたことで、そこで会う人たちと交流して自分の居場所が見つかり、新たな仕事にも巡り会えました。そうした感謝の気持ちをもって、デフリンピックでも自分の力を発揮できるよう頑張りたいと思います。
取材・文/西村智宏 写真提供/大成温調株式会社、堀花梨