結婚5年目で起きた異変

── どんな結婚生活だったのでしょうか。
岡野さん:最初の5年間は夫婦仲はよく、子どもにも恵まれて幸せでした。当時は景気がよくて、不動産会社に勤めていた夫の収入は月100万円を超えることもあり、羽振りがよかったんです。ところが、実家にまつわる土地(借地)のトラブルがきっかけで、夫に不信感が芽生えました。母が苦労して建ててくれた、実家が持つ借地権の購入の交渉を、父が夫に任せたんです。すると夫は、相場よりかなり安い値段でその土地を買い叩き、自分名義にしてしまったんです。父は「娘婿だから構わないよ」と納得していましたが、私の気持ちは複雑でした。
その数か月後、夫が実家の建て替えを提案。承諾すると3日で壊されましたが、しばらく経っても建て替えなかったんです。その後おかしいと思って調べたら、土地の名義が知らない会社のものに変わっていたんです。知り合いの不動産屋に相談したら「たぶん計画的だろうね」と言われました。思い出が詰まった場所を奪われたことへの怒りと悲しみで、信頼が大きく揺らいだんです。
── 信じていた相手に裏切られ、大切な思い出の場所まで失った。そのショックは大きかったでしょうね。
岡野さん:ただ、その時点では、離婚までは考えていませんでした。決定的だったのは、その後の浮気です。
ある日「税務署に追われていて家に帰れない」と夫が突然、言い出して、居場所をはぐらかされたんです。しかたなく、10日分の着替えを持たせたのですが、なかなか帰ってこない。おかしいと思い、住所を突き止めて行ってみたら、女の家のベランダに私が持たせたパンツが干してあったんです。証拠になると思って写真を撮り、弁護士に相談したものの「それだけでは証拠にならない」と一蹴されました。探偵に頼むお金もない。だから、サングラスにロングのウィッグをつけて自分で張り込みをしました。
── そのかっこう、かえって目立つのでは…。
岡野さん:でも、そのおかげで張り込み中に近くの同じアパートの住人の女性が声をかけてくれ、協力してくれることになったんです。夫には「もしも浮気しているならやめてほしい」と訴えましたが、「俺はお前たちのために命がけで働いてる」なんて言うものだから、バカな私は信じてしまって。ところが、その直後に協力者から「今、来ました!」と連絡が…。それが離婚の決定打でした。
結局、裁判で有効な証拠は取れず、資産も巧みに隠され、財産分与や慰謝料は得られなかったんです。離婚調停中は、夫が理不尽な理由で私を訴えてきたり、親権を奪おうと、あの手この手を画策したりと、まさしくドロ沼でした。
離婚が決まったのは、子どもが3歳のとき。8年間の結婚生活にようやくピリオドを打つことができ、心からホッとしたことを覚えています。