大学も進学を断念「22歳でふと見つかった目標」

── とても苦しい状況だったと思います。

 

臼井さん:当時は高校3年生で、進路を決めるタイミングでもありました。指定校推薦で短大を受けて無事合格したのですが、当時の私はスケジュールが決まると具合が悪くなってしまったんです。「決まったことは守らなくては」と強迫観念に追われる感覚で、プレッシャーを感じたのかもしれません。それを機に一気に具合が悪くなって…。家からもほとんど出られなくなってしまいました。

 

今でも覚えているのですが、家の郵便受けに手紙を取りに行くのもつらいくらい。音にも敏感になり、耳を抑えないと道を通るバイクの音が我慢できませんでした。結局、短大には通えないまま、数年間家に引きこもることに。「高校を卒業したら進学するのが当たり前」という感覚だったから、「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」とよけいにふさぎこんでしまいました。当時の挫折感はとても大きかったです。

 

それでも自分にできることに少しでも取り組もうと、できる範囲でアルバイトをすることに。体調の波は激しかったのですが、さいわいなことに近所の牛丼屋さんは比較的シフトが自由でした。一緒に働く人たちもいい人たちばかりだったんです。4年くらいバイトをして暮らしていくうちに、少しずつ元気になっていきました。22歳のころ、将来のことを考えられるようになり、「いずれは家でネイルサロンを開きたい」と思うようになりました。

 

臼井理絵
20代のころの臼井さん(写真中央)

── なぜそう考えたのでしょうか?

 

臼井さん:私は家事をするのが好きなタイプでした。だから「将来は結婚したい」「家で夫の帰りを待ちながら、おこづかいを稼ぐ程度に仕事をしたい」と、当時は思っていたんです。外で働くのは時間の融通が利かないし、大変そうだから、家で働けるような技術を習得したいと考えました。

 

そのときになぜか、ネイリストとして働くイメージが浮かびました。ネイルスクールに体験に行ったとき、自分の爪を施術してもらうと、すごくときめいたんです。「これを仕事にしたいな」と思いました。でも当時の私は22歳。大学に進学した友人が進路を決めて就職するタイミング。ほかの子にくらべ、私は遅れをとっている…と引け目を感じていたから、ネイルスクールにいまから通うのは遅いのかも、という迷いがありました。

 

でも、地元の友だちがトリマーの学校に通い始めているのを知って。「今から勉強してもいい」と思えたんです。調べてみると、ネイルサロンが経営するネイルスクールがありました。決まった時間割はなく、自分の都合のいいときに予約をして通えるスクールだったのも、体調に波がある私に向いていました。社会復帰の一歩という感じでした。入学して学んでいくうちに、自宅でサロンを開くには現場経験を積んだほうがいいと思い、1年半ほどサロンで働きながら技術を磨き、25歳のときに自宅でネイルサロンを開きました。