昨年放送された大河ドラマ『光る君へ』に史上初めて障害者の俳優が出演。障害者モデルを束ねる臼井理絵さん(39)は高校時代にうつ病になり、引きこもった経験も。つらい経験を経て導かれた起業。人生、何が起こるかわかりません。(全2回中の1回)
携帯に1日数百件の無言電話が鳴った
── 臼井さんは2021年、障害者専門芸能事務所・アクセシビューティーマネジメントを立ち上げました。今では所属している障害者モデルや俳優たちは、資生堂やユニクロなどの大手企業のCM、大河ドラマにレギュラー出演するなど、大きな話題となっています。ただ、ここにいたる道のりは平たんではなく、高校生のときはメンタルの不調で苦しんだ経験があると伺いました。まずは当時の様子を伺えますか?
臼井さん:高校2年生の10月ころから、学校で持ち物を隠されるなどの嫌がらせを受けるようになりました。友だちは多くて楽しく学校に通っていたので、最初はあんまり気にしていませんでした。「誰がこんな子どもっぽいことをするんだろう?」と、友だちにも話していたくらいです。
それがだんだんエスカレートしてきて…。12月ころには、携帯電話に1日数百件の無言電話がかかってくるように。嫌な思いをしつつも、ふだんと同じように振る舞っていたんです。でも、それがよくなかったのかもしれません。不快な思いにふたをして、気づかないふりをしたことで、ストレスが少しずつ積み重なっていき、結果、ノイローゼっぽくなったんです。
「冬休みになったら、そこでひと息つくはず」と思い、踏んばっていたのを覚えています。なんとか気持ちを立て直して、新学期には登校しました。ただ、1週間後に風邪をひいて学校を休むことに。出鼻をくじかれてしまい、心が折れてしまったんです。体調がよくなってもしばらく学校に行けませんでした。親が心配してくれて、そのときになってはじめて学校で嫌がらせを受けていることを親に打ち明けました。
── ご両親はどんな反応でしたか?
臼井さん:「つらいなら休んでいいよ」と言われ、ホッとしました。2週間ほど休んだのですが、心配した担任の先生から連絡が来たり、保健の先生から「保健室に来ていいから学校においで」と言われたりしました。それで少し行っては休んで…という感じで再び登校し出したんです。
ところが、高校3年生を間近にした春休みに、いじめの首謀者と名乗る人からメールが来ました。「死ね」など、信じられないような言葉をぶつけられたんです。メールには同級生でないと知らないことも書かれていたのですが、犯人に心あたりがなくて…。みんな仲がいいのに裏で誰がこんなにひどいことをしているんだろう…人間不信になりました。
心療内科に行くと「うつ病」と診断されたんです。3年生のときは保健室通学をして、なんとか単位を取得。結局、嫌がらせの犯人はわからないままでした。どうしてこんなことをされたのか、原因も不明でした。それがなおさら苦しかったです。