「俺、お前がおらんとすぐ死ぬと思うわ」

── 復帰が早いのも驚きですが、「完走するんだ」という寛平さんの信念、そしてそれを支える内助の功もすごいですね。おふたりで力を合わせて完走するまでにさまざまな苦境を乗り越えてこられましたが、光代さんに心境の変化などありましたか?

 

間さん:実は私も33歳のときに女性に多いがんで闘病し、抗がん剤治療を経験しました。寛平さんが闘病することになったとき「お前の気持ちがやっとわかったわ、しんどかったな?」って言われました。それまで寛平さんは健康な人でしたからね。私は「今ごろわかったん?」って返しましたけど、病気を経験してお互いそう言い合えるような関係になりました(笑)。

 

この年齢になると夫婦の会話がないとよく聞きますけど、うちはいろんなことが待ったなしに起きますから、話すことが次から次に出てくるんですよね。よくも悪くも、そういうネタみたいなものをとめどなく提供してくれるのが寛平さんですね。

 

私たちも歳を重ねて今の年齢になり、「お互いに労りあおう」って決めているんですよ。私がいちばん気をつかわないのは寛平さん。寛平さんも「お前や」と言ってくれるんです。だから残りの人生もお互いを大事にしようと。先日も「俺、お前がおらんとすぐ死ぬと思うわ」って言うから、「私もそうよ」って言うんですけど「それやったら一緒に死のう。でもお前は絶対長生きするわ」というから、「そうよ、一緒に死んだら私はあなたより9歳も年下だから9年損やし」って。なんかコントのようなやりとりをしたところです(笑)。

 

── 深い絆のあるご夫婦ゆえに成り立つ愛のある会話ですね。夫婦円満の秘訣はありますか?

 

間さん:長年夫婦をしていると小さいことでも積み重なりストレスになりがちですよね。たとえば電気ひとつ切ってないこととか「あ!また切ってない!」って怒って言いたくなりますけど、自分だって切ってないときもあるわけですから、ひと呼吸置いて「電気切ってくれた?」と、言い方を改めるわけです。もちろん向こうも「わかってる(怒)」などと言い返さないように「そうやったわ、ごめんごめん」と言えるように心がける。そうやってお互い労われる努力が大事なのかなと。

 

女の人ってね、男の人が「言葉で言わなくてもわかるだろう」って言うから腹が立つ。もちろん私もそういう時期はあったんですが、そうじゃないんですよ。ここまでくると、もうお互いに労わらないと仕方ないんですよ。この先どちらかが下の世話をしないといけないとなったらお互いしかいないんですから。子どもたちは子どもたちの人生がありますし、親のことで手を煩わせたくなんです。だから「どちらかが施設に行かないといけなくなったときはふたりで入りましょう」って言ってるんです。