「ハラスメント」に敏感になっている大人が増えているいっぽう、子どもに対するハラスメントについては問題意識が薄く、教育や躾の名のもとに被害が埋もれがちです。そこで『マンガでわかる! おとなも子どもも知っておきたいハラスメント』で話題になっている名古屋大学の内田良教授に、子どものハラスメント問題についてお話を聞きました。

子どもに対するハラスメントは周囲が気づきにくい

ハラスメントとは、相手が嫌がる言動をして不快にさせたり不利益を与えたり、尊厳を傷つけたりすることで、人が集まるところではいつでもどこでも起こる可能性があります。

 

「子どもの場合、たとえば、先生や保護者からの必要以上の叱責、暴力・暴言、また、子ども同士のいじめもハラスメントのひとつです。子どもは日頃、大人から指導を受けることが多いため、周囲からはその行為が教育や躾なのか、ハラスメントなのかがわかりにくく、対応が遅れがちです」

 

そして、特にいま問題になっているのが、教員や指導者、親族による子どもへのセクハラや性加害です。

 

「学校や家庭、塾などは子どもが当たり前のように過ごす場所であるにもかかわらず、外部の人が様子をうかがいにくいため、性被害があっても気づかれにくいという特徴があります。明らかに立場が上の権力を持った大人や、信頼している大人からの加害が多く、子どもが逆らいにくい状況に追い込まれるという点も、被害が見えにくくなる原因でもあります」

 

性被害を受けた子どもは周囲に相談しづらく、抱え込んでしまうこともあります。また、一般的に女の子が被害者になるケースが多いですが、男の子が被害を受ける場合も珍しくありません。

 

「子どもへの性暴力やセクハラを防ぐには、大人が気を配ることがもっとも大切です。そして、子どもたちに知っておいて欲しいのは、“相手がだれであっても、子どもに性的なことをしてくる大人は信頼できる大人ではない”ということです」

 

どんな事情であっても、セクハラや性暴力は決して許されるものではありません。世間がセクハラに目をつぶっていた時代に生きてきた大人こそ、常識のアップデートが必要です。次からは、どのようなことが子どもへのセクハラ行為ととらえられるのかをご紹介します。