子宮動脈塞栓術で切らずに3日後に退院
── あまり聞きなじみがない治療法だと思いますが、どのような方法なのですか?
柴田さん:子宮筋腫は、子宮に流れる血液を栄養にして大きくなっていきます。そこで、カテーテルを使って、子宮へ血液をおくる動脈に細かい粒状の物質を入れて、筋腫への血流を遮断し、いわば「兵糧攻め」にするわけです。血液が行かなくなることで、筋腫はだんだんしぼんでいくという仕組みです。
私も最初は、「そんなことをして子宮に影響はないんですか?」と心配になりましたが、「子宮というのは、生命をつかさどる臓器なので、そう簡単には死にません」と説明されました。国内ではまだ症例が少なかったそうですが、欧米では一般的にこの方法で治療しているとのことでした。当時、お腹を切る手術だと回復までに2週間ぐらいかかりましたし、そのころは仕事がとても忙しかったので、長く休むことはできません。でも、子宮動脈塞栓術なら、体にメスを入れずに済み、復帰も早いと聞いて治療を決めました。
── 実際の治療はどのように行われたのでしょうか。
柴田さん:全身麻酔ではなく、お腹の局所麻酔で行なわれました。モニターを見ながら、先生が「カテーテルが子宮の入り口に到達しましたよ。じゃあ詰めますね」と、実況中継してくださるんです。細い管の中からピンポン玉みたいな粒がトトトッと入っていく様子を「おおっ」と言いながら、観察していました。自分の体の中で何が起きているのかをリアルタイムで知ることができ、なんだか不思議な感覚で、すごくおもしろかったですね。
手術は短時間で終わりましたし、入院も「1日でもいいですよ」と言われたのですが、念のため、2泊3日することにしました。そのおかげで、1週間もたたないうちに仕事に復帰できました。
術後のひどい痛みの原因は「私が暴れたから」
── 手術の実況中継を楽しむなんて、好奇心旺盛な柴田さんらしいですね(笑)。術後の痛みは大丈夫でしたか?
柴田さん:手術中は麻酔が効いているから痛みはなかったんですけど、夜になると痛くて痛くて…。そのときは、「いま、兵糧攻めにされた子宮筋腫が断末魔の叫びをあげているんだ」と、自分に言い聞かせながらグッと耐えていましたね。翌日、「痛みがひどかったです」と先生に訴えたら、どうも夜中に寝ている間に私が痛みで暴れたせいで、痛み止めの麻酔の針が外れていたらしくて…。

── 逆に、その状態でひと晩よく耐えましたね(笑)。
柴田さん:痛み止めがまったく効いていない状態だったんですよね。「そりゃ痛いはずですよ」と先生にも言われました(笑)。でも、その後はひんぱんにトイレに行くこともなく、貧血も改善。仕事をするうえでの不安がなくなりました。切らずに済む方法を選べて本当によかったと思います。私の時代は保険適用になっていなかったんですが、最近は保険を使えるようになったみたいです。
── 選択肢が増えるのは安心ですね。
柴田さん:はい。お腹を切らないで済むから体への負担も少なく、忙しい女性にとってありがたいですよね。今は治療の選択肢も増えているので、若いうちから自分の体に向き合うことをおすすめします。
取材・文/西尾英子 写真提供/柴田理恵