母から余命を告げられ「なぜか妊娠に気づいて」
── 結婚して比較的すぐに妊娠されたのですね。
こんどうさん:もともと私は「多嚢胞性卵巣症候群」と診断を受けていて、子どもができにくいと言われていました。だから夫とも話し合い「子どもについては自然に任せよう。少しチャレンジしてみて、もし授からなかったら2人の生活を楽しもう。体に負担をかけてまで不妊治療をすることはないよね」と、意見が一致していたんです。
ある日、一度は寛解したはずの母が、骨髄性白血病を再発してしまって。電話がかかってきて「私はあと10日しか生きられないみたい」と、母から告げられました。まさか母が余命10日なんて、想像もできません。急すぎて本当にショックで…。不思議なことに、そのときになぜか、子どものことが頭に浮かびました。「もし子どもを授かっていて、それを知らないままお母さんが亡くなったら絶対に後悔する」と思って。
その日のうちに妊娠検査薬を購入して確認してみると、まさかの陽性反応。本当にびっくりして…。夫に伝えると、喜んで号泣していました。母に報告すると「なんとなくそんな気がしていた」と冷静な反応。母の直観力の鋭さにびっくりしましたが、宣告通り10日後に亡くなりました。妊娠しにくいと言われていたのに、そのタイミングで母へ報告ができたのは、何か目に見えない大きな力が手を貸してくれたんじゃないかなと思います。

── 当時はまだご自身が慢性疲労症候群だとは知らなかったと思います。原因不明の体調不良でありながらの出産は不安だったのではないでしょうか?
こんどうさん:体調不良だから不安という気持ちはありませんでした。自分のことよりも、「ヒトという生物として子どもを授かれるなら、産み育てたい」という感覚は強くて。こうした考えが芽生えたのは、父が獣医師、母が研究者の家庭環境で育ったことも影響している気がします。だから、「人間も動物である」という感覚が育まれたのかもしれません。
意外なことに、妊娠中はふだんよりも痛みや歩きにくさなどが軽減されました。お腹の中に赤ちゃんがいることで血液量が増え、病気を発症して以来、体調がいちばんよかったです。とはいえ、つわりによる吐き気、眠さ、頭痛、貧血、便秘など、妊婦が経験する体調の変化はひと通り味わいました。出産は7時間ほどかかりましたが、安産だったようで、無事に女の子を産むことができました。