雪が降り積って体が動かなくなることも
── 獣医学科は実習などもあり、とてもハードなイメージがあります。実際の生活はいかがでしたか?
こんどうさん:忙しかったけれど、新生活に気持ちが浮き立っていました。「体調が悪いと思うのはストレスが原因」だとずっと言われてきたから、「今はこんなに楽しく過ごしているし、きっと体調もよくなるだろう」と思っていました。
ところが、体の不調は増すばかり。学校に行くだけで体力を使い果たし、急に意識がなくなり倒れることも…。北海道は冬になると大雪が降ります。授業や実習で体力を使い果たしているから、帰宅途中で動けなくなるんです。すると体に雪がどんどん降り積もって。泣きながら重い体を引きずり、一歩ずつ足を運び、家まで帰っていました。

── それは遭難する一歩手前の状態ですね…。
こんどうさん:体の節々がいつも痛いのが当たり前でした。これまで3回、骨折したのに、一度も気づかなかったほど。ふだんから同じくらいの痛みに耐えていたから「まぁ痛いけど…動けるし。いつものことだろう」と見過ごしてしまったんです。あとから病院に行って骨折が判明し、「よく我慢できたね」と驚かれました。
大学の勉強はハードで、私の体力ではついていくので精いっぱい。当時、交際を始めていた現在の夫が、勉強を教えてくれたり、どうしても出席しないといけない実習のときは学校まで連れて行ってくれたり。おかげで獣医師の資格を取得し、大学を卒業することができたと思います。
── つねに体調が悪いのに、大学卒業後は獣医師として就職したとのこと。体に負担をかけない働き方は選択肢になかったのでしょうか?
こんどうさん:当時は原因もわからないから「私は健康」と、自己暗示をかけていたんです。だから卒業後も、ほかの人と同じように就職するのが当たり前だと思っていました。動物病院で獣医師として就職することにしたのですが、実際、働き始めると本当に過酷で。ごく短時間であればだいたいのことはできるのですが、無意識のうちにものすごいムリを重ねているみたいで…。気づいたときには、まったく動けなくなり、しばらく寝たきりの生活になって。母が病気になったこともあり、結局、退職をして看病に専念することになりました。
この体調不良は普通ではないと自覚したのは、結婚後、夫との会話からでした。あるとき一緒に買い物に行ったとき、冷たい風が吹いていたんです。「風が吹くと体って痛くなるよね」と、私にとってはごく当たり前の話をすると、「普通はなんともないよ。そう感じるのは体がおかしい証拠だから、病院に行ったほうがいい」とびっくりされました。