「要介護5の母」受け入れ施設が見つからず
── 受け入れが難しいと言われてしまう理由は何だったのでしょう。
藤さん:問題は母の症状が重すぎることでした。要介護5です。自力で尿を出すことができないので、カテーテルで管を通しバックに尿を貯めていて。便も自分の力では出せず、管を入れて、お腹をさすりながら便を排出させるブジーという方法をとっていました。その処置ができる施設が見つからなかったんです。いくつか候補はあったものの遠方だったり、「1000人待ちです」といわれたり…。何より施設費がものすごく高いんです。
母に長く生きてほしいけれど、実際のところこの先、母の生命力がどこまであるかわからず、その年月に貯蓄が追いつくかもわかりません。ムリして高い施設に入れたとしても、経済的に2年しかもたなければ、その先どうすればいいかということになってしまいます。お金もないし、なんとか家で頑張ってやっていくしかないと思い、自宅介護を決めました。
母は嚥下能力があったので、それも自宅介護をする決め手になりました。入院当初は鼻から管を通して胃に栄養を送っていたけれど、嚥下検査後は重湯が食べられるようになりました。でも、そのままだとおいしくないので、母はなかなか食べてくれません。母の好きな佃煮をすりつぶして病院に持って行き、重湯に混ぜたらようやく全部食べてくれました。

ただ、それまでまったく食べようとしなかったのに、急に完食したものだから、看護師さんから「あなたが食べたんじゃない?」なんて疑われたりして(笑)。重湯からはじまり、三分がゆ、五分がゆとなり、ついに常食が食べられるように。もし嚥下能力がなく、胃ろうになったとしたら、私ひとりでは手に負えなかったと思うし、家に連れて帰ろうとは思わなかったでしょう。でも、いざ家に連れて帰っても、お金の問題は大きく、ずっとつきまとうことになりました。