コミュニケーションを円滑にする褒め方
── 入江さんのように、家族を自然と前向きにさせるような行動を心がけたいものですが、何から始めればいいでしょう。
入江さん:私、よくいろんな人から「褒め上手ですね」って言われるんです。会社で働いているときも子育てでも、自分にない特性や考え方を尊重しようと考えるタイプでした。そもそも夫に惹かれたのも、自分と正反対だったからなんです。社交的で明るい性格の夫に対して、私はもともと内向きな性格で人づきあいが苦手。自分にはない特性がある人だったから、徹底的に支えたいという気持ちになれたんじゃないかなと思います。
── 息子さんからも「褒め上手」と?
入江さん:私の著書のなかで長男が質問に答えているのですが、彼は私の褒め方について「気分によって褒めるのではなくて、きちんと筋が通った褒め方をしている点がよかった」と評価してくれていました(笑)。女性はつい感情的に褒めたり怒ったりしがちですが、きちんと理由があったうえで褒めたり叱ったりすることが大事なのだと思います。
── 感情的に叱ってしまうことが多いような気がします…。
入江さん:だとしても、関わり続けることが大事です。どんなに短くとも向き合う時間は大切にしてほしい。幼稚園から中学くらいまでの間で、どれだけ子どもと向き合える時間をつくれたか。それがその後、どれだけ子どもたちが幸せになるのかに関係してきます。夫に先立たれて以来、自分にずっと言い聞かせてきたことだし、その思いは今も変わりません。とはいえ、長時間である必要はないんです。短時間でもいいので密度を濃くすることがいちばん大切だと思います。
親が仕事で忙しくても、子どもにとっては「自分のために時間をつくってくれた」という記憶が残ります。私自身、息子たちから「一生懸命、時間をつくってくれたよね」と言われますから。子どもに「自分が愛された」という記憶が残ると、そのあとも幸せな人生が送れるはずです。
取材・文/池守りぜね 写真提供/入江のぶこ