フジテレビの「お天気おねえさん」から専業主婦となり、優秀な報道記者だった夫を陰で支えた入江のぶこさん。取材中の小型飛行機墜落事故で夫を亡くしたのち、失意の底から立ち上がり、フジテレビに再就職。女手ひとつでふたりの息子を育て上げ、いずれも東京大学に進学させています。子育てにおいて重要視していたのは、意外なことでした。(全3回中の3回)
勉強好きの息子たちの特性を見極め東大合格へ導いた
── 夫の事故死という悲しみを乗り越え、シングルマザーとして育てた2人の息子さんはともに東大に進学されています。お子さんの能力を伸ばすために気をつけていたことはありますか?

入江さん:子どもの特性の見極めは重要だと思います。わが家の息子たちはサッカーなど身体を動かすような競技は不得意で、本を読んだり図鑑を見たりするのが大好きでした。そういう「好き」な気持ちを尊重しましたね。
勉強方法については子どもたちに任せていましたが、評判のいい塾などは私がとことん調べましたし、「受験マトリックス」と呼ばれる得意分野や苦手分野などの分析も徹底的に行いました。息子たちにとって勉強に最適な環境を用意する。それくらいしか私にできることはないと思ったので、必死にやりました。
結果的に息子たちは2人とも筑波大学附属駒場高等学校から東京大学に進学しましたが、受験勉強自体が嫌いでなかったから成功したのだと思います。どの子にも、その子なりの得意なことや、やりたいことがあるはずなので、まずは親が子どもの特性を理解してあげることが大事です。「この子にはこれが向いている」と思ったら、それを踏まえて親が学びや体験に導いていく。そういったプロデューサー目線で見守るのがいいのではないかなと思います。
── 入江さんの息子さんはふたりとも東大に入学されたとはいえ、興味の方向は全然違っていたのでしょうか?
入江さん:そうなんです。長男は高校生のころから「哲学を学びたい」と希望が一貫していました。東大では超域文化科学という分野を学んで、今は大学でアメリカ思想史やアメリカ哲学という学問領域を教えています。次男も東大を卒業しましたが、長男とはまったく違いテレビ局に就職しました。「報道だけは行きたくない」といって編成局やバラエティ番組の制作を担当していましたが、思うところがあったのか、1年前に転職し、今はコンサルタント業に従事しています。