異変は異臭から「流しの下から汚れた下着が」

── 最初に異変に気づいたのは誰でしたか?

 

山田さん:最初に気づいたのは僕の妻でした。母の部屋に入ると異臭がしたんです。気づいたら、母はトイレで排泄をするのも難しくなっていました。トイレに間に合わず、汚してしまった下着を流しの下などに隠していて…。

 

妻が「お母さんの様子がおかしい。病院で診てもらおう」と言い出したんです。妻は10代のときに自分のお母さんを亡くし、僕と結婚してすぐにお父さんを亡くしています。お父さんとお母さんがそれぞれ病床についたとき、介護もしていたんです。だからこそ、僕の母の様子を見ていて、異変に気づいたのでしょう。妻が母を病院に連れて行ってくれました。認知症の疑いのある人を病院に連れていくのは大変なことです。本人は「自分は認知症じゃない」とプライドを持っているから抵抗する場合が多いらしく。でも、妻がうまくうながしてくれました。

 

病院で検査を受けると認知症と診断されました。介護が必要かを判定する「要介護認定」では「要介護3」と言われました。食事や着替えはもちろん、排泄や歯磨きなど身の回りのことすべてに介護が必要な状態です。「まさか母が認知症なんて。しかも、かなり進行しているとは…」と、ショックでした。当時は認知症や介護の知識がなく、ネガティブなイメージしかなかったんです。「この先どうなるんだろう」と、不安しかありませんでした。

 

── 実際に介護が始まってからはいかがでしたか?

 

山田さん:最初のうちは女性同士ということもあり、妻が主介護者として母のめんどうを見てくれていました。排泄のこともあるから、僕があれこれ手出しをするよりも、同性の妻が適任だと思って。でも、あるとき、妻からとてもハッとすることを言われたんです。