「悩んでも意味ないでしょ」母の言葉に励まされ
── それだけ回数を重ねれば安心、という感じでしょうか。
ノビさん:それがそんなにうまくいかなくて…。抗がん剤治療後に検査したら、正常な筋肉との接地面にがんが残っている可能性があることがわかったんです。医師からは「放射線治療、やりますか?どうしますか?」と。「やらなかった場合は再発の可能性がある。そのときにまた取るか、放射線治療で完全にリスクをなくすか」という選択を迫られました。正直「またか」という気持ちもあったし、しんどいなとは思いましたが、せっかくここまで治療を続けてきたんだからと腹をくくり、放射線治療をやることに決めました。
── そうだったんですね…。普通なら弱音を吐きたくなる状況ですが、これまでのお話を伺っていると、治療中もずっとポジティブシンキングですよね。なかなかその境地に達するのは難しいと思うのですが…。
ノビさん:僕、自分のことをポジティブだとは思っていないんですよ。ただ、悩んでも意味ないと思っているだけ。母も「悩んでも意味ないでしょ」という性格なんです。うちは母子家庭で姉が2人いるんですけど、悩むひまもなく働き続けてくれて。おかげで、姉は短大へ、僕は4年制大学へ進学することができました。
しかも、母自身も僕と同じ38歳で大きな病気を経験したのですが、その性格が幸いしてか、無事に病気を乗り越えられた。そういう母を近くで見てきたからかもしれません。東京で芸人をしていたときも、売れてなくてお金もないという状況で、悩むヒマがあったらバイトしようという感じで生活していたので、こういう病気との向き合い方ができたのかなと思います。
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悪性腫瘍を切除してひと安心と思いきや、がんの再発の可能性が判明し、今度は放射線治療をすることになってしまったノビ山本さん。これが長い入院生活の引き金になったものの、一貫して「悩んでも意味ない」という信念を胸に病気と立ち向かいました。現在は無事治療を終え、地元・富山で元気に活動を続けています。
取材・文/髙木章圭 写真提供/ノビ山本