ただのこぶかと思ったら悪性腫瘍だった
── 2022年11月に無事マラソンを完走して、あらためて腫瘍の検査をすることになったそうですね。
ノビさん:入院してこぶ部分の細胞を採取し、病理検査に出したら、悪性の可能性が高いことがわかりました。それで、大学病院でさらに詳しい検査をすることに。驚きはしたんですが、母のこともあったので、この時点ではあまり深刻にはとらえていませんでした。
でも、大学病院に行ったら雲行きがどんどん怪しくなっていって…。「PET検査しましょう」などと検査の連続。とはいえ、その間も自分ごとじゃないような感覚でした。基本的に、楽観的なんですよね、僕。たくさんの検査を終えて「粘液型脂肪肉腫という悪性のがんの一種です」と説明を受けたときも「あ、そうなんすね」くらいの反応をしたら、さすがに「真剣に聞きなさい」って母に叱られましたが。
──「粘液型脂肪肉腫」という聞き慣れない病名がついた時点でも、何も症状はなかったのでしょうか?
ノビさん:本当に何もなくて…。マラソンとかバイトの疲れのほうがしんどかったくらい(笑)。周りからも「普通はひざの裏にそんなでっかいのできてたら、風呂とかで気づくやろ!ノビさんって身体洗わないの?」とイジられました。自分で気づくまで放置していたら、今ごろ足がなかったかもしれません。先生には「本当にいいタイミングで見つかったと思いますよ」と言われました。
粘液型脂肪肉腫が足にできた場合、がん細胞が増殖して太い血管を取り込むことで転移する可能性があり、結果的に足を切断したり人工関節になったりする場合があるようで。僕の腫瘍はテニスボールくらいの大きさだったのですが、運よく血管を取り込まず筋肉に包まれた状態で、まだ初期のうえ切除しやすいケースだったそうです。僕自身はまったく気がついていなかったので、見つけてくれた女性タレントの方には本当に感謝しています。
── 良性腫瘍だと思っていたのががんだとわかったときは、やはりショックだったのではと想像しますが…。
ノビさん:「やれることやらんと、逃げても意味ないしな…」と思っていました。「嫌だ」って言っていても、どうにもならないじゃないですか。僕、すごく感銘を受けた先輩の言葉があって。あべこうじさんが人生を芸人に例えて話されていたのですが、舞台袖にずっと立っていても、緊張して怖いじゃないですか。でも、舞台に立ってネタをしない限りは進まないんですよ。舞台袖でずっと「怖いな。緊張するな…」と考えるよりも、思いきって舞台に出て、ウケたらよし、スベったらまた違うネタをやればいい。それで「立ち向かわないと時間が進まないし、自分のためにもならない」と言ってくださったんです。それを思い出したので、何の迷いもなかったです。
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ひざ裏にがんが発覚して、治療をスタートさせたノビさん。抗がん剤治療に始まり、切除手術を経てひと段落したと思ったら、がんが取りきれていない可能性があることが発覚。結局、放射線治療も経験することになりました。放射線治療は特につらかったようですが、持ち前の前向き思考もあり、どうにか明るく乗りきることができたそうです。
取材・文/髙木章圭 写真提供/ノビ山本