過去の失敗は今の貯金
── モデル時代は派手な生活をされていた時期もあったそうですが、生活が一変しましたね。
マヤさん:以前は都心のど真ん中に住んでいて、外に出れば流行の最先端のものに触れられる環境でした。こちらにはおしゃれなブティックもレストランも少ないけれど、今はなんでもネットで買うことができるし、高級レストランに行かなくても、自分たちで育てた野菜をおいしく料理することで満足しています。手に入るものは減ったけれど、お金では買えない価値がたくさんあるということにも気がつきました。
ドンペリをポンポン開けて、一流デザイナーの洋服を着て。靴を買いに行ったら「このサイズの靴、全部家に送って」とか、洋服も試着が面倒だから、「ここにかかっているもの全部ちょうだい」なんて言っていた私が、お金を出さなくても心が豊かになれるものがあると知って。
過去の失敗は今の貯金ですね。失敗は、そこで終わってしまったら失敗のままですが、それを次に活かしたら必ず自分の財産になる。過去の自分を振り返ってみると、めちゃくちゃ感じ悪かったなって反省することばかりです。今は人の優しさやありがたさ、自然の美しさに気づけるような自分になれてきたかなと思います。近所の農家さんから農業に関する知識を教わることもありますし、ダーリンが若い農家さんに技術を教えたり、みんなで集まって料理を作ったり。地元のコミュニティも広がってきて楽しいです。
── 楽しそうな生活が浮かんできます。
マヤさん:移住して畑仕事を始めて、今の自分にワクワクするようになったんです。年齢を重ねると新しいことを始めるのが面倒になったり、怖くなってしまったりすると思うのですが、一度しかない人生だし、今までにない自分に出会うのって、とっても楽しいですよ。
「自分は何のために生きてるんだろう」と考えていた時期もあったのですが、せっかく生きているんだから、いろんな自分になりたいなって。十人十色って言葉がありますよね。それをアレンジして、今のモットーは「一人十色」。欲張りだけど、一色なんて決めないで、ひとり十色あってもいいなって思ってるんです。新たな自分を探して、見つけて、楽しむための人生でありたいと思っています。
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自分で作った野菜の味は格別だと話すマヤさん。ところが数年前、生きがいとなっている畑仕事中に重い熱中症になってしまった経験があるそうです。全身に痙攣が起き、顔が歪んでしまったそうで、そこから半年ほど手の痺れなどが残ったといいます。それ以来、熱中症予防には細心の注意を払っているそうで、みなさんにも異変を感じたらすぐ対処してほしいそうです。
取材・文/内橋明日香 写真提供/林マヤ