病気の症状以上に「周囲の無理解」に苦しんでいる

──「笑みだち会」の活動を通して、気づいたことを教えてください。みなさん何にいちばん困っていたのですか?
小林さん:やはり偏見や差別です。当事者の場合、就職活動の際に病名を言うと断られた人もいました。見た目でわかる病気なので、たとえば飲食店でのバイトの場合、「キッチンや裏方の業務でも大丈夫ですか?」と聞かれたという経験談もなかにはあります。
また、幼稚園で「受け入れできません」と言われた親御さんもいました。口唇口蓋裂の症状だけであれば、受け入れ態勢を整えるような病気ではないんです。入院や手術をするタイミングがあれば学校を休むこともあるし、口周りの手術が多いから、給食を食べるのに時間がかかることはあるけれど、支援サポートをつけなければいけないような病気や障がいではないとわかってもらうのに説明を要したという話も聞いたことがあります。
なので、病気の症状で悩むというより、「口唇口蓋裂」という病気のことを知らないがゆえに周囲の理解が得られなくて悩むことがほとんどだと感じました。
── 当事者が子どもや学生さんの場合はどうなんでしょうか?
小林さん:幼少期や学生時代は、かつて自分が受けてきたような、見た目に対する「からかい」やいじめに悩む人もいます。私の場合はあまり過激ないじめを受けたことがないのですが、学校でばい菌扱いされたという経験も聞いたことがあります。学校へ行ったらいじめられるから自分の顔が嫌になり、学校へ行きにくくなる当事者もいるようです。私自身も小学生時代にストレスで円形脱毛症になり、中学校は不登校で2年生の中ごろから卒業まで通えませんでした。
口唇口蓋裂の当事者や家族は、その症状以上に周囲の理解のなさから孤立し、悩んでいます。それは本来、周りのみなさんの知見と理解があれば防げる悩みもあるはずだと思います。「病気がもたらすネガティブな面だけがすべてじゃないよ」と伝えるなど、その人自身が自分を肯定できるサポートができたらうれしいですね。あとは、口唇口蓋裂で生まれたとしても、社会になじみ、溶け込んでいく手段はいっぱいあるというのを示したいです。そしてひとりで戦い、孤独を感じている仲間に、横のつながりを提供したいです。