「口唇口蓋裂で生まれても、楽しいことはある」

小林えみか
自身について講演するえみかさん

── 現在はご自身の病気や日常についてブログで発信されています。中学校では病気に対するコンプレックスで不登校になり、高校で仲よくなった“ギャル友”にも最初は病気のことを明かすのに抵抗があったとそうですね。いつごろからどういうきっかけでブログを始めたのですか?

 

小林さん:2015年、21歳で治療がひと段落したタイミングです。「病院側が計画した治療プランはいったん終了です。今後について考えていきましょう」と医師に言われ、これまで20回以上の手術をし、治療のために生きてきたような人生を今後どうしようかと考えたときに、自分の経験を誰かに伝えたくなりました。

 

というのも、口唇口蓋裂が原因で悩んだり不安になったりしたときに、同じような症状や体験がある人がいないかと検索しても、マイナスな情報しか出てこず、よけいに不安になるばかりだったんです。私自身、大変な思いをたくさんしてきましたが、楽しいこともあったので「口唇口蓋裂で生まれてきても、楽しいこともあるよ」というメッセージを残したくなりました。いろんなことに悩んできた当時の自分に言葉をかけるとしたら…というポジティブな発信をブログに残そうと書き始めたんです。

 

── ブログを始めて何か反響はありましたか?

 

小林さん:当時は自分の名前も明かしていなかったのですが、口唇口蓋裂の当事者で、しかも「ギャルっぽい口調の子」がブログで発信しているというのが目新しかったようで、ブログ開設後1か月でアクセスランキング1位になりました。

 

そして3か月後にはテレビ番組の方から取材のオファーをいただき「ザ!世界仰天ニュース」にVTR出演をしました。口唇口蓋裂という病気で生まれてから大人になるまでの私の体験をお話しし、手術や治療、さまざまな困難を乗り越えて今がある、といった内容の紹介をしていただきました。放送後はブログに1日で76万件ものアクセスがあり、500件を超えるメールが届きました。

 

ある時、口唇口蓋裂のお子さんをもつお母さんから「『ザ!世界仰天ニュース』を観ました」と声をかけていただき「患者の家族同士、病医院以外でも交流できる場がほしい」と相談されました。すぐにブログで呼びかけて1か月後には約20名が集まり、交流会を開催。ブログ開設後、届くメールのなかには、親から病名を明かしてもらえなかったという当事者からの悩みがあるいっぽう、口唇口蓋裂の子どもを産んでしまったことに罪悪感を持つ親御さんもいらっしゃって、双方の悩みを知り合う機会になればと思い「笑みだち会」と名づけて活動を続けることにしました。