病院の待合室で見た本「私、この病気なん?」

小林えみか
1歳のときに兄と

── ご自身が病気のことを自覚されたのはいつごろでしょうか?

 

小林さん:保育園に入って、周りから顔がちょっと変だとか言われるようになってからですかね。自分が今まで病院に通っていたのは、顔に関する病気のためだったんだな、とわかり始めました。

 

「口唇口蓋裂」という病名をしっかり認識できたのは、小学生になってからです。病院の待合室に口唇口蓋裂の本が置いてあり、開いて見たら自分と同じ顔の症例の写真が載っていました。「あ、これ自分と同じやな」と気がついて、母親に「私、この病気なん?難しい漢字やけど、何て読むの?」と聞きました。

 

── 親御さんはそのとき、どんな説明をしてくださったんですか?

 

小林さん:淡々と説明をしてくれました。「こうしんこうがいれつ、っていう病気やで。赤ちゃんのころから病院に通っているのは、この病気を治すためやで」と。娘から突然、質問されて驚くとか、困っている様子とかはなく、当たり前のように「風邪ひいたから病院に来ているんだよ」「けがしたからばんそうこう貼ろうね」と同じ感覚で説明を受けてたように感じました。 

 

── 当時はどのくらいの頻度で病院に通っていたのですか? 

 

小林さん:小学生のころは毎月のように通っていました。成長に伴い、歯の矯正治療や小まめな経過観察が必要な時期だったので。大阪大学歯学部附属病院の口腔外科に行っていました。

生後3か月で唇を閉じる手術を受けた

── 初めて手術を受けたのはいつですか?

 

小林さん:生後3か月になります。以降、1歳半、4歳、小学2年生、4年生と、定期的に手術を受けてきました。小学4年生を機に、骨の成長をもう少し待ってからでないと治療には進めないということで、いったん手術はおやすみに。高校2年生のときに手術を再開しました。手術をしていない間も歯列矯正には毎月通っていました。そこから24歳まではまた、毎年のように手術を受けていました。多いときは半年に1回手術を受ける、という期間もありました。

 

── 具体的にはどんな手術を受けてきたのですか?

 

小林さん:生後3か月、最初の手術ではパックリ割れた状態の唇を閉じることに。口唇口蓋裂の赤ちゃんは、ミルクを飲みやすくするために最初に唇を閉じる手術をすることが多いようです。1歳半のときには、のどの近くの口蓋が割れていたのを閉じる手術をしました。口蓋裂を閉じると、言語訓練もあわせて行うことで正しい発音ができるようになります。その後も鼻や耳を成形するなど、それぞれの部位が正常に機能するように少しずつ治していきました。