小学4年生で後頭部に円形脱毛症ができ

小林えみか
7歳のころ。言語聴覚士の方と訓練中

── 小学生のころには、知らず知らずのうちに円形脱毛症ができていたこともあったそうですね。

 

小林さん:小学校4年生のときです。同じ学年の子は私の病気のことをわかっているので、仲よくしてくれる子もいれば、距離を置く子もいましたが、明らかないじめはなかったんです。でも体の大きい上級生に囲まれて顔をまじまじと見られたり、コソコソ何か言って笑われたりすることも多く、怖かったのを覚えています。難聴と嚙み合わせの悪さゆえ、滑舌が悪いのでそのしゃべり方をまねされることもありました。それで自分が気がつかないうちに後頭部に円形脱毛ができていて、学校の先生が母親に知らせてくれました。

 

「えみかちゃん、髪の毛に500円玉くらいの脱毛ができているんですけど、お母さんご存じですか?」という連絡を受けた母が私の髪の毛をかきわけてみたら髪がない部分があり、驚いて。「ちょっと髪の毛ない部分あるけど、なんかあったの?」と母から聞かれました。当時は、ストレスと脱毛がつながっていなかったのですが、そういえば、という感じで、「見た目や話し方をからわれるのが嫌だ」と言った記憶があります。

 

── それを聞いてお母さんの反応は?

 

小林さん:母は「それが原因で円形脱毛症になったのかな」と気がついたようで、学校に事情を説明してくれました。学校側もすぐに動いてくれて、その後、全校集会が開かれました。私が通っていた小学校は、いろんな障がいや事情を抱えて支援学級に通っている子も多かったので、私だけのことと特定せずに「病気を持っていてもいなくても、人が嫌がることは言わないようにしようね」という話を先生がしてくれて、それ以降はからかわれることも少なくなりました。おかげで円形脱毛症も自然と治っていきました。

 

子どもだった私はあまり気づいていなかったけれど、周囲からの反応に知らず知らずのうちにストレスを抱えていたんだと思います。のちに同じ病気を抱えている人たちと交流するようになって、改めて感じたのですが、多かれ少なかれ、かつて自分が受けてきたような、見た目に対する「からかい」やいじめにみんな悩んでいます。でも、それは本来、周りのみなさんの知見と理解があれば防げる悩みなんじゃないかと思います。

 

 

小学校を卒業し、中学生になった小林さん。1年生は同じクラスに小学校からの友達がいたこともあり学校に通っていたのですが、2年生になると環境が大きく変化し、不登校に。卒業まで1年と7か月の間、学校へ行くことができませんでした。見た目に対するコンプレックスを抱えながら入学した通信制の高校では、ギャル友達と出会ったことで学校生活が一変。病気のことを伝えても「えみかは、えみかやん」とありのままの自分を受け入れてくれたことが、小林さんの人生において大きな救いとなったそうです。


取材・文/富田夏子 写真提供/小林えみか