茅葺き職人を目指していた矢先に、屋根から落下する事故で脊髄を損傷し、下半身まひとなった渋谷真子さん。車いすでのリアルな生活をYouTubeで発信しています。なかでも排泄や性についての投稿には、大きな反響があったそうです。(全3回中の2回)

SNSで海外の車いすユーザーに憧れた

渋谷真子
入院初期。空に向かってピースサイン

── 茅葺き職人のお父さまの跡を継ごうと見習いを始めた矢先に屋根から落下し、脊髄を損傷して車いすの生活になった渋谷さん。現在はYouTubeでご自身の体験を配信されていますが、そうした活動はいつから考えていらっしゃったのですか?


 
渋谷さん:
入院中からです。初めはブログを考えていたんです。「ケガとか病気について発信するのは、ブログがいいのかな」と思って。すぐに始めるのは難しいと思ったので、ベッドの上でメモ程度ですが、日記を書いていました。

 

自分が車いす生活になりたてのとき、いろいろな疑問がわいてきて。解決したいと思って、リハビリの先生や看護師さんに聞いても「わからない」と言われることが多かったんです。私はそれほどメンタルをやられていなかったのですが、「歩けなくなって悲しい」と思っている人が、わからないなかを手探りで生きていくのはこれだと不安だろうな、と思いました。

 

それに、当時は「車いすでも楽しいことができる」という情報が、日本ではほとんど見つからなかったんです。「#車いす」でSNSを検索してみたのですが、「こういう人みたいになりたいな」「楽しそうだな」と思える情報がなくて。ためしに英語で「#wheelchair」と検索してみたら、かわいい人やイケメンやおしゃれな人がたくさん出てくる。「こういう人になりたい!」「海外の人たちがしているような、楽しそうな発信がしたい」と思いました。

 

誰もが突然車いすの生活になるかもしれないですよね。そうなったとき、「つらいよ」「大変だよ」ということだけじゃなくて、「こうしたら、こんなことができるよ」ということを知ってもらえる場所があれば、あとから来る人のためになるだろうな、と思いました。その場所は、テキストよりも動画のほうがたくさんの人に見てもらえるだろうと思って、YouTubeを始めました。

 

SNSがあったから、私は世界中から情報を得られたし、「こんなふうになりたい」という目標を持つことができました。私も誰かにそう思ってもらえるような発信をしたいですし、みんなにもそういう使い方をしてほしいと思いますね。