「胸がなくなっても平気だよ」夫のひと言に傷ついて

──「旦那さんにも悩みを理解してもらえない」というのは、ご本人にとってつらいでしょうね。

 

神田さん:なかには優しい旦那さんもいらっしゃいます。ただ、出産も生理も「平気でしょ」「しょうがないでしょ」みたいに言う男性って、ときどきいらっしゃいますよね…。私も夫に乳がんの手術について打ち明けたとき、本人が動揺したんでしょうけれど、「胸がなくなっても平気だよ。うちの犬だって去勢したじゃないか、それと一緒だろ?」と言ったんです…。悪い人じゃないんですが、私からすれば「犬の去勢と一緒なの?」みたいに思って。

 

相手に悪意がなくてもこちらは傷つきますよね。私も一度そういう思いをしてからは「もう、がんの話は誰にも言わないでおこう」と、思うようになってしまいました。

 

── 友人にも話しにくい悩みですよね。

 

神田さん:そうなんですよね。私自身も、信頼していたママ友がいたんですが、その人は子どもを通じて私が乳がんの手術したと知ったらしいんです。それで「私も胸にしこりがあるみたい」と、相談されたことがありました。「病院を紹介するからすぐ行こう」と言ったら「怖い」というので、私もつき添って一緒に行ったんです。

 

結果、しこりは良性だったので本当によかったんですが、診察室から出てきた彼女が「よかったー!『胸を切る』なんて言われたら、私、死んじゃう」と、言ったんです。

 

手術後にも使用できる、やわらかい素材でできたブラジャーも販売

── すでに胸を手術している神田さんに対して、デリカシーのない発言ですね…。

 

神田さん:私の築いてきた人間関係がよくなかったのかもしれないのですが、でもこれがふつうの人の感覚なんだろうな、と気づきました。がんにならなければ、がんの人の痛みにはそこまで関心がないだろうな、と。

 

でも、私はがんの治療を経験したし、この経験は私の強みだと思うんです。今は「この経験を人に話さないでどうするの」くらいの財産だと思うようになりました。私は再建手術もしたので、希望するお客さまには、再建した胸をお見せして経験談をお話しすることもあります。

 

── 同じ乳がんサバイバーだからこそ、気持ちがわかってあげられるんですね。 

 

神田さん:私ががんで死ななかった理由は何だろうと考えたんですが、「この経験を財産にして人の役に立つ」という使命があるんじゃないかと思ったんです。というと、ちょっと大げさですけど。よくがんによって得られた経験を「キャンサーギフト」と言いますが、がんが神さまからのプレゼントなのであれば、この仕事は細々とでも続けていきたいなと思っています。